エピローグ
「ありがとう、夢を見せてくれて」
スリープカプセルに俯せになりながら、頭から両目まで覆われたマシーンが取り外され、ネオは表情を崩さぬままに礼を言った。
顔には皺が刻まれているが、若き日の面影は先程の夢の如く、老いと共存している。
「あの時代はとても懐かしい」
そう言った両目は天井に映し出されている宇宙よりも遥か遠くを見つめている。
「本当にこれで世界はまた新しくなるのでしょうか」
そう聞いたのは、ネオに付き添う一人の青年だった。
「未来は変えられる」
ネオはそれだけ呟いた。
「君もそろそろ眠るか」
「はい、私もお休みさせて頂きます。ネオ総帥」
と、青年は深く一礼する。
「早く夢を見ろ。そうすれば俺達はもう一度幸福になれる」
「人類が本来の姿に戻るのですね。未来のためにまた私達は始まりに戻る」
「ああ、これで本当の未来が始まる。新しい朝が来る時、太陽の陽を受けることに何の疑問も持たない程の平和が訪れるだろう。そして二度と過ちを犯さぬ為に、この記憶を誰かが受け継いでくれる」
「あなたはどうなさるのですか?ネオ総帥」
「永遠の夢を見る。もう二度と目覚める事はない」
ネオは両目を閉じた。その顔は穏やかであり、今という時間をゆっくりと吸い込むように、胸を上下させていた。
「最後の仕事を頼んだよ」
片目を薄く開き、青年の方を見てネオは言った。
「勿論です。仰せのままに」
青年はそう言いながらネオが眠りにつくのを見守った。
最後の光が消える時、人類は永らくの間、眠りについた。静寂と暗闇が街を覆い、悲しみや喜びといった感情の気配もまるで無い。ただ、そこに流れる時が存在するだけだ。人類はまた眠りの中で、今と未来を繰り返すだろう。再び夢から覚める日まで。
あとがき
三年前に初めて書いた時は、こんなに長く書く事になるとは思いませんでした。まず世界観が絵のように思い浮かんで、こんな世界があったらいいなぁという具合に書き進めていったのですが、文章力が未熟で書ききれていない部分が多かったと思います。そして私の遅筆も手伝って、こんなに長く連載する事になってしまいましたが、もしも読んで下さる方が一人でもいらっしゃれば、それが私の救いです。本当にありがとうございます。
初めて書き終えた長編小説という事で、評価よりもまずは自分の中でやり遂げたという気持ちでいっぱいです。これから先も、また新しく小説を書いていきたいです。SFかファンタジーがいいと思っていますが、そこはまだ考えている途中です。そして、まだ書ききれていない小説の方も続けて書いていきたいと思います。とても遅筆ですが、付き合って下されば幸いです。ありがとうございました。これからもよろしくお願い致します。次回はエブリスタでSF漫画を連載する予定です。そちらもどうぞご覧になって下さい。
※おまけのイラストをpixivとエブリスタの方に載せました。是非見てみて下さい。




