第4話 「夢から醒めて 1」
風に乗って、都会の死んだ香りがした。いつも以上に夕焼けは美しく、その姿を惜しげも無く見せている。
ネオは振り返る。そこにはずっと恋焦がれていた瞳が変わらないまま、そこにあった。しかし、違う。彼女じゃない。ネオは気づいた。その背中には羽が生えていた。それも、金属で出来ている羽だ。
「違う、トルネじゃない」
咄嗟に唇から漏れていた。その言葉に、トルネは悲しげに眉を下げた。
「私は私だよ。ネオ。私、生まれ変わったの。体は違うけど、私はトルネだよ」
しかしネオは、変わったトルネの姿を受け入れられなかった。トルネは死んだ。そう、あの時に。ロボットに殺されて死んだ。自分の母のように。そして目の前のロボットも、また自分の大切な人を奪おうとしているに違いない。
奴らに感情などない。数字の羅列に従って行動を起こすのみだ。奴らの原動力はただの電気信号だ。ネオはトルネに向かって銃を向けていた。
「お前はロボットだ」
「何、言ってるの?お願いそれを降ろして」
「ロボットは全員壊さなくちゃならない」
「私、トルネよ。ほら、子供の時、一緒に遊んだじゃない。皆で一緒に」
惑わされてはいけない。ロボットは利口だから、人間の心理をついて言葉を選んでくる。トルネと名乗るそのロボットはネオに近づいてきた。ネオは一歩後退り、銃を一発放った。衝撃にトルネの身体は跳ねたが、何も無いようにネオにまた一歩近づいた。その瞳にはオイルのような涙が伝う。
「トルネの振りをするな!」
「ネ……オ、私は……トルネ」
「うるさい!」
一発、二発と胸元に光線を当てる。ロボットの動きは段々と奇妙になり、その正体が浮き彫りになる。最後の一発を当てようと、放った時、光が貫いた先に居たのは別のロボットだった。
「ロッド」
ネオは目を丸めながら名前を言った。ロッドはトルネを庇って、代わりに身体に損傷を受けた。その場に膝から崩れ落ちるが、ロッドは赤い鋭い瞳をネオに寄越し、再び立ち上がって両手を広げながらトルネを庇っていた。
「何でお前が、庇うんだ。ロボットの癖に。お前がトルネを殺したんだぞ!」
何とも言えぬ、気持ちの悪い感情がネオを襲い、顔の筋肉は痙攣し、歯ぎしりをした。
「俺は、ニンゲンだ」




