第2話「初めて見る夢は真実 2」
ネオの発言に、母は一瞬きょとんとした顔を浮かべると、すぐに笑いながら背中を向けた。
「そうなの?ならネオが頑張って倒してくれないとね」
「本当なんだ!!信じてくれ!俺が母さんを守らないと」
ネオは床の下に落ちている銃を拾って窓の外を警戒して眺めた。
「ネーオ?あなたまた父さんの形見使ってるわね。危ないから仕舞っておきなさいって言ったでしょ?」
買い物袋から果物を一つ手に取って、ネオの背中に母は告げた。しかしネオは構わずに窓の外を見続ける。
「今日来るんだ……あいつが。あいつが」
母は半ば呆れたように首を振るも、買い物袋の中身を覗くと、ネオに告げた。
「ネオ、ちょっと買い忘れたものがあるから、母さん行ってくるわね」
母の言葉は、戦争ごっこに夢中になっている我が子には声は届かなかった。幸運な事か、不運な事か、今日は警告音が鳴らされていない。母は一人で出掛けていった。
母が出掛けたのに気づいた時、既に遅かった。日が落ちた空にも電灯が灯り始めた。家中を探しても母の姿は見当たらない。
「母さん……?母さん!」
外だ。そうだ、子供の頃も自分は気づかずに、母を一人で外へと外出させてしまったのだ。だが、記憶を拾う前のように、この先の展開はまだ思い出せない。
とにかく急いで助けに行かなければと、足を踏み出した。そこで警告音が鳴った。耳障りな音と共に街中の人間の悲鳴や騒ぎ声が溢れ出す。ロボットが暴れだした。やっぱり今日がその日なのだ。ネオは窓の外に目を奪われてしまい、何故だか足が竦んでいた。動きたくても動けないのだ。
「どう……して」
そして、最も思い出したくない記憶の欠片がネオの頭に蘇る。そう、あのロボットだ。母を殺したロボットが、窓の外から自分を感情のない目で睨んでいる。ネオの両足は震え、尻もちをついた。恐怖で歯がかたかたと揺れる。
しかしネオは自分の意識に告げた。
――これは夢だ。これは夢だ。現実じゃない。
ネオは強く銃を握りしめ、ロボットに向かって構えた。
「今度はちゃんと、俺が守るから」