第13話「世界で一番美しい音 3」
「簡単さ」
世界滅亡は差し迫ってきた。自由意志を持つロボット達は全てリアンの体と融合した。
機械鳥の上で、シカゴは針金のような過敏感知センサーを指先から伸ばし、インネットグラスでキュゥ郎の内部を覗きながら、複雑過ぎる機械の構造を弄った。その様子に、ルウはつい口を挟んだ。
「何故お前達は、身体を機械に改造したがる。あいつも確か片目を改造していたはずだ」
「説明はしづらいが、答えを出すとするなら恐怖だ。変わりないさ。皆、恐怖から始まった。だから俺達は夢を求める。恐怖から解放されるために」
ルウは僅かに頷いた。確かに誰しもが恐怖から逃げようともがいている。あのテドウ総帥ですらもそうだった。
「アンタは片目が見えないのかい」
「これは昔、ロボットにやられたんだ」
「気の毒に」
「いや。本当に気の毒なのは俺じゃない。片目が潰れても俺はまだ見えている。両目が無事でも暗闇のまま、何も見えない人間もいる」
頭の中には誰かが思い浮かんでいた。幼い自分を守ろうとし、傷を負わせた事をいつまでも責めて閉じこもっている姉の事を。
「もしも夢が見られるのなら、一時的にも現実を忘れる事が出来る。昨日が永遠のように繰り返されずに、新しく明日を迎えられるのだろう。姉も、笑える日が来るはずだ」
シカゴは黙ったまま耳を傾けていた。新しい日など、生まれてこの方味わったことがない。いつも目を開けると昨日のままだ。もしも、今自分達がしようとしている事が本当に希望だとするなら、科学という病に侵されたこの都会で、皆が新しい朝を迎える事が出来る。平和という、美しい名前の朝だ。




