第12話 「世界で一番美しい音 2」
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「平和……兵器。ドウリ、テドウ……」
「そうか、なるほど。総帥はお前を始末していなかった。記憶を消去して、希望を託したんだ」
「ワタクシが、デスか」
「ああ、お前の歌が鍵だ。だが、その声じゃダメだ。誰かに直して貰わなければ」
その時、建物の合間から物凄いスピードでやってきた飛行車が、隣を並走した。ルウは、パイロットを確認すると、その席に座っていたのは特殊部隊の目立たないフードの男だった。確か名前はシカゴといっていたが、ルウは完全に忘れていた。
「誰だ!」
「……。元特殊部隊のシカゴさ」
「何の用だ」
「詫びをしたくてね」
恐らくリックの事を言っているのだろう。詫び、という簡単な言葉にルウは眉根を寄せて、相手の頬を殴りたい気に襲われた。
「ふざけるな。貴様の手など借りんぞ」
「俺のチームの責任は、俺の責任だ。その尻拭いをするのも俺の役目」
「だから何だ。責任をもってお前が代わりに死ねるのか?」
「いや、俺は死ぬのが怖い。だからこそ分かる。このままロボットに人間が殺されていいわけがない。どんな憎しみも請け負うさ。ただし、それはこの戦争を終わらせてからだ」
「お前に何が出来るんだ?」
ルウは未だに信用ならぬ顔で、鼻先まで影のかかったシカゴの顔を見た。
「リックという男は機械技術にも精通していただろう」
「ああ、俺達のチームの中では一番詳しかったな。何故それを?」
「昔、同じ学校に通っていた」
「何?知っていたのか?」
「俺の完全な片思いさ。何せ、当時トップの成績だったものだから」
そう言うと、シカゴはインネットピアスを指で持ち上げて見せた。その意味が最初、ルウは分からなかったが、何となく察した時に思わず唇を開いて息を発した。
「悪いが復元して遺書を読ませて貰ったよ。仏の私物を盗るのは忍びないとは思ったが、何かこの国の不眠の原因と自由意志の暴発について、分かると思ってさ」
「リックは……もう」
ルウの反応に、シカゴは何を言わんとしているのかが分かり首を横に小さく振った。
「死んでたよ。物理的には」
「物理的には?」
「知識や意志は死なない。例え本人が死んでも誰かに受け継がれれば、永遠に生きる。俺は、あんたらの役に立てる。リックの意志はここで生きている」
そうシカゴは、自身のこめかみに指先を当ててみせた。その仕草にルウは、この男に手を借りてみるのも悪くないと考えた。
「時間が無い。キュゥ郎を直せるか?」




