第5話「定まる機体 3」
「ククク、……ははははは!!」
高らかに豪快に、声は総帥室全体に響いた。
「何がおかしいんだ。気でも狂ったか」
「笑いが止まらんのだよ。愚かさに」
「黙れ!死ぬのが怖くねェのか」
ネオは思わず大声を上げた。だがテドウは臆することなく、両手をゆっくりと広げた。
「私を撃て」
テドウは未だに笑みを浮かべているままだ。予期せぬ行動にネオは動揺すると、僅かに意志が揺らぎ、怯んだ。ルウはネオに言う。
「待て、罠かもしれん」
すかさず、テドウは言った。
「どうした?撃て、殺せ!私が死ねば全てが終わる!憎しみの連鎖から抜け出し楽になれるだろう」
笑い声が、無機質な室内の中をグルグルと躍る。ルウは冷静に「挑発に乗るな」と、ネオに告げる。
「私は知っているぞ、ネオ。お前の弱さを。本当に全て国やロボットが悪いと思っているのか?」
「何が言いたい」
「お前は私に良く似ている」
テドウの含み笑いを見て、ネオの心には不安の火が灯った。
「……さあ、撃て。母親が殺されて悔しかっただろう。何もかも終わらせろ。ネオ」
静かに言うテドウには、一寸の迷いも見えなかった。ネオはついに決断を下した。
額に汗が滲み出て、銃を持つ手はいつの間にか震えていた。角度を保つように呼吸を整える。そしてテドウ総帥を、撃った。
額に穴が開き、静寂が幕を開けると、テドウの身体は抵抗もなく全ての体重を机に預けた。そして最早肩書きなども関係ない、ただの屍と化した。
ネオの心は空虚だった。後悔も、達成感もない。ただ、終わりだけが訪れた。まるで傍観者のようだ。ネオは振り返って言った。
「急ごう。今に政府関係機関は俺達を狙ってくる」
「ネオ」
ルウは立ち止まったまま、テドウの死体を眺めていた。不思議に思ったネオは、ルウの顔を見あげた。
「どうした?」
「まだ終わっていない」
「何?」