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R-001  作者: 白宮 安海
第四章 狂おしく未来《きみ》が愛しく
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第4話「定まる機体 2」


窓の外は浮遊機体が点々と空に模様を描いている。警告の報せはまだ無い。机に座っているテドウの前で側近は言う。

「テドウ総帥。飛行車が一機、こちらへ向かってきております。乗車しているのはネオとルウ、それからあの変なロボットです」

「そうか。戻ってきたか」

「はい。しかしロッドの姿はまだ見つかりません」

テドウは瞼を微かに震わせた。

「もう、その時が来たようだ」

「総帥、ロッド様を、本当に壊すおつもりですか?」

かつて死ぬはずであった息子の成長を想像してつくったのが〝ロッド〟だ。そのロッドが己の正体に気づいた。恐らく自分を殺しに来るだろう。俯きながら、テドウは言った。

「壊すつもりか?馬鹿な事を言うな。あれは私のものだ。ロッドはこの国を変えるために必要だ」

「それじゃあ、ロッド様は」

「ああ、改良して私の命令だけを聞くようにする。ロボットにも、人間にも負けん最強の兵器になるだろう」

「何ですと」

テドウの言葉に、側近は目を丸めて見据えた。すると、テドウは笑みを浮かべ、やがて声を出して笑い出した。

「私は世界を平和にする。ドウリのつくりたかった世界だ」

部屋に響いた笑い声に、側近は戦慄し、その場から逃げ出したいと尻込みをした。


テドウは暗闇ばかりの視界で、未来を浮かべた。

(もうすぐ。もうすぐだ。この国の未来は変わる)

拳を強く握りしめ、自身に念じる。苦しみに押しつぶされそうになると、テドウは、あの純粋さを失わぬ美しい人の姿を思い浮かべた。

側近は、おびただしく進歩を遂げた国を窓から見下ろした。まるで配線がこんがらがっているようだ。地球の内部は混線した機械の裏側だ。そして人間も、まるで機械のように感情の灯火が消えている。恐ろしく完璧に、頼りなく。

テドウの鼓膜へ通告音が鳴る。耳の下に取り付けている神経を過敏にさせる装置を押す。

『テドウ総帥、ネオ率いるAチーム、帰還致しました!』

「分かった。9N0Sはいるか?」

「充電が切れたようで、車に残っております。こちらには来ておりません」

「通せ」

テドウは総帥椅子に腰をかけなおし、少年達を待った。部屋の扉が横に開くと、あの時見送った時の少年達と見間違えるような険しい顔を浮かべたネオとルウが入ってきた。二人共、本当の戦争を知った子供のように、瞳の奥は深く暗かった。

「失礼します。ネオです」

「報告を」

テドウは淡々と言う。

「リックが殺されました。殺したのは、同じ反ロボット連盟の特殊チームの、オーニュリンズいう男です。そして、その男をルウが始末しました」

ネオは、椅子に座るテドウを正面から見詰めた。まるで様子を伺っているように。テドウは流れる空気が僅かに変わったのに気づいた。

「リックの死はこちらに届いている。惜しい人材を無くした。ロッドはどうした」

「まだ分かりません。だが一つ分かった事がある。それは俺にとって大きな収穫でした」

「分かったこと?」

テドウは密かに、神経装置を強度に変えた。ネオの息遣いは確かに、急くものだった。

テドウはふと、通路に続く扉へ目をやった。

「まさか」

言うや否や、光線銃が直線を描いて側近の頭を貫いた。側近は「あ」と声を漏らしただけで、その場に倒れて動かなくなった。テドウは思わず立ち上がった。目が覆われていても、テドウが動揺している様子はネオ達から見ても明らかだった。

「警備隊を全部破壊したのか。緊急警報は鳴らなかったぞ」

「メインコントロールを弄ったんだ。リックの遺言に従って」

「お前達、二人でか」

「いや、協力して貰ったんだ。ロボットに。リックの遺言をインプットさせてな」

「何だと?9N0Sは飛行車にいるはずだ。貴様ら、ロボットと協力したのか!何よりも憎んでいるロボットと」

ネオは口を結び、眉を寄せると、真っ直ぐとテドウに銃を構えてから、口を開いた。

「そうだ。何より憎んでるロボットを使って、何より憎むべき存在をぶっ壊しにきたんだよ。それから、飛行車のアレはキュゥ郎じゃねェ。人間は見えるものだけを信じ過ぎる」

「立体具体化装置を使ったのか」

「……終わりだ。アンタも」

ネオはトリガーを指で押し始めていた。その動作に気づいたテドウは急に高笑いをし始めた。

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