第3話「定まる機体」
*
医療施設から中央地区へ戻るため、ルウは飛行車を遠隔操作で呼び寄せた。
リックの遺言を読み終えてから、ずっとネオは考えている事があった。飛行車に二人と一体で乗り込むと、ルウが声紋認証でパワーをオンに切り替える。まだ回復が十分ではないネオは後部座席に座り、運転はルウがする事となった。
「ネオ、大丈夫か?」
振り返りながら問われると、ネオは少し黙ってから口を開いた。
「リックの事について考えていた」
「ああ、遺言か」
ボルテージが上がり、機体は浮上する。空が近づくまでは、それ程掛からない。
「リックを殺したのは、特殊部隊の連中だ」
「あいつは俺が始末した」
「そうだな。だが、何で、よりによって人間なんだ?人間が人間を殺すなんて、不毛だ」
ネオは自分の掌を見据えてから、きつく瞼を閉じた。
「リックの遺言に書いてあっただろう。本当の敵はロボットじゃない。ロボットが自由意志を持ち始めた原因は、国にある」
「忌まわしい不眠の原因も……」
沈黙が流れる。雲の隙間を通り抜けると、小さく整列されている都会が下に見えてきた。
「俺は終わらせてやる、絶対に」
「死ぬかもしれんぞ」
「かもな。でもまだ生きてる。死んでいった奴らの為にも、俺は未来を変えなくちゃならねェんだ」
近未来の機体は心地よいスピードで、風を横切る。
「政府に逆らうのか?ネオ」
険しい口調で、ルウは問う。
「政府に逆らうのは一級犯罪だ。ペナルティだけでは済まん。死刑になるんだぞ」
「どっちでもいい。あるのは改革した未来だけだ。俺は、その為に死んだって構わない」
ネオの覚悟のある声に、ルウは言葉を飲み込んで頷いた。
「お前を死なせたりはしない」
帰路を見出した機体は、無振動に走る。まるで本当に空を飛んでいるかのように。
「そう言えば、キュゥ郎の奴静かだな」
ふと、いつもならば会話に入ってくるはずのキュゥ郎が静かなことにネオは気づいて、座席の横を見下ろした。
「充電でも切れたんだろう。自己充電型タイプなのか?そいつは」
「さあ、知らねェ。何せ型が古いからな。……ん?」
横たわったキュゥ郎の足の裏部分に、何か文字が彫られているのをネオは見つけた。
「system peace……、produced by douri」
「何を言ってるんだ?ネオ」
「こいつにそう彫ってあるんだよ」
「多分製造元だろう」
「ドウリ……どっかで聞いた事があるな」
「そろそろ着くぞ、ネオ」
視界はより一層騒がしくなっていた。もう既に目の前には大都市が出迎えていた。
巨大な司令塔の周りを浮遊する小さな球体が何体も整備されている。政府は警戒を強めているのだと分かった。同時に、ロッドがまだ戻っていないだろうという事も。




