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R-001  作者: 白宮 安海
第三章 イキル
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第19話 「非情な正義5」

黒く無機質な腕が伸びた時、ネオの頭上で音がした。風が巻き上がり、髪が無造作に揺れ動き、見上げたすぐそこには飛行車が浮かんでいた。

「間に合いました。さあ、乗って下さいネオさん、ルウさん」

運転席に座るキュゥ郎はロッドとネオとの間に着地させた。風に煽られながら、ルウはネオの体を抱え飛行車へ乗り込んだ。


「キュゥ郎、でかした!」

ネオは笑いながら言った。

「それ程でも。さあ、発進しマスよ」

飛行車は機体を震わせ、宙に浮かんだ。段々と遠くなる地の上で、ロッドはネオ達を見つめていた。以前、ルウは攻撃に備え武器を構えていた。だが、それ以上何もしてはこなかった。

「ハァハァ、助かった」

急に全ての力が抜け、座席へへたりこんだ。

「すぐに病院に行ってくれ、キュゥ郎。ネオの腕がまずい」

と、ルウは座席から身を乗り出して言った。

「ネオさん、なんて怪我を……。分かりマシタ。機械医療施設へ向かいマス」

「機械医療施設……?やめろ、人間がやっている所にしてくれ。俺の体をロボットなんかに触らせねェぞ」

瞼も落ちかけている状態の中、ネオは気力を振り絞りながらも抵抗を告げる。

「その腕じゃ、人間が治すのは無理デス。腕を切り落とすことになりマスよ」

「そうだ、ネオ。ここは耐えてくれ。人間の方に行けば、腕を機械化させられてしまう事もある」

ルウはキュゥ郎に続いて何とか説得しようとした。ネオは俯きながらも、結んだ唇を小さく開いてぽつりと言う。

「分かった……。機械医療施設へ向かってくれ」

「了解しマシタ」

飛行車は見えない軌道に沿って走った。白い雲が形を変えて差し迫っては消えていく。


ルウはネオの口元へ薬を押し付けた。

「眠剤だ。眠っている頃には、病院へ着くだろう。その間に手術も終わる。飲め」

ネオは僅かに顔を寄せ、薬を唇で受け取る。舌の上でカプセルが溶け、苦味と甘みが同時に伝った。

「なぁルウ。リックは夢を見てるか?」

薄れゆく意識の中で、ネオは聞いた。現実感がなくなっていく頭上の空に、リックの姿が刻まれる。

「ああ、見てる。今、幸せな夢を見ているに違いない」

「そうか……」

そのまま、ネオは瞼を閉ざした。全ての音が遠ざかり、暗闇だけが広がった。

次に目を開いた時、景色は空色ではなく、白い壁だった。


挿絵(By みてみん)

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