第12話 「機械だけのユートピア 4」
ゲート内の情勢は更に酷い有様だった。暴走したロボット達が互いに破壊しあい、中には逃げ惑うロボットもいた。まるで自分が見てきた戦争と同じ様子だった。色彩豊かな建物は、ロボットの手によって次々と形を崩していった。
ネオは光線銃で一体一体確実にロボットを仕留めていく。しかし、あまりにも数が多かった。先程映像で見た赤いゲート付近まで行くと、キュゥ郎の姿を見つけた。ネオは駆け寄った。
「キュゥ郎!無事か」
「ああ!ネオさん。良かったデス。私のせいでおかしな事に……。この罪は体で償いマス!」
「今そんな事言ってる場合じゃねェだろ。お前はいいからリックとルウの所に行ってこい。まだ正門ゲート付近に居るはずだ」
「でもネオさんを置いていけません」
「俺は大丈夫だ。ロッドを探さなきゃならねェ。お前はリックとルウを守ってくれ。分かったな?」
「ハイ、マスター……!じゃなかった。ネオさん」
キュゥ郎が正門ゲートへ向かうのを見送ると、ネオは前方から近づいてくるロボットに光線銃を撃った。気を取られている間に、後方から他のロボットに羽交い締めをされてしまう。必至にもがいてもロボットの力にはかなわない。
「おい、離せ!この機械野郎ーー」
絶対絶命の状況に、ネオはぐっと歯を食いしばる。
光線銃を持つ腕を何とか上げようと試みるも、それすら難しかった。
だが、そうこうしているうちに一筋の光線がロボットの額を貫いた。解放されたネオは振り向いて顔を確認しようとしたが、人間の姿は見当たらなかった。
そこで音声通信が耳に流れてきた。
「そっちの様子はどうだ?」
「粗方片付けた。だが、記憶チップは回収出来ていない」
喋っているのはルウだった。
「データが破損するのか?」
「ああ。取り除くには、ロボットの機能をそのままにしておく必要がある」
「破壊したらダメって事か……」
「そっちの状況は?」
「えらい数だ。このままじゃ……。っ!」
ネオは目を疑った。ロボットの郡の隙間から、スローモーションで目が合った。黒い外殻は、昔の面影を残していなかったが、その瞳の無機質な冷たさは知っている。
「どうかしたか、ネオ」
「まさか」
通信を切ると、ネオは直ぐにその行方を目で追った。黒い影は既に、遠くの方へ離れていた。ロボットの間をぬって急いでネオは走った。
(ロッド……!!)