第8話 「作戦 2」
仁王立ちで現れたキュゥ郎に、ネオは目を見開いた。
「本当に来やがった」
「どういう事だ。一体」
驚きを隠せず、ルウは疑問に思った。すると、キュゥ郎は身振りを交えて教えてくれた。
「珍しい昆虫が目の前を飛んで居たので、追いかけて行ったらあなた方を見つけた次第です。またお会い出来るとは何たる喜び!」
「なるほど、誘導したのか」
ネオは冷静に理解を示した。
「何やら困った事でもおありのご様子で。三人共険しいお顔をされていますが」
二人に向かって顔を向けると、リックとルウも見返してきた。代わりに説明してくれと言わんばかりに、ネオは顔を俯かせた。リックはネオの代わりに、キュゥ郎に言った。
「キュゥ郎、手伝って欲しい事があるんだ」
「ええ、ワタシの可能な事ならば何なりとお申し付け下さい」
「僕達は離島に行く。それで、君にも一緒に来てもらいたいと思ってる」
「離島とは何ですか?ワタシはソレを知りません」
キュゥ郎がロボットらしからぬ動きで首を傾げるのを、ネオは一瞥下したが、すぐに目を逸らした。
「ロボットのパラダイスさ。きっと気に入るよ。この虫なんかよるもっと素晴らしいさ」
リックは、さも保証付きだと言うような怪しい笑みを浮かべる。だが、キュゥ郎はあっさりと騙され、嬉しさを表現するかのように飛び跳ねていた。
「ソレは是非お供します!早速準備しなくては。まず、オシャレをして」
「おい!」
突然、ネオはキュゥ郎の言葉を遮った。眉根を寄せながら、ことの重要さも分からないロボットを睨みつけた。
「時間がねェんだ」
「ソレは失礼致しました」
キュゥ郎は礼儀正しく、あくまで機械らしく頭を下げた。
「下から行くんじゃ駄目だ。連盟がロボットと仲良く歩いてるんじゃ示しがつかねェ。飛行車で行く」
「空を飛ぶのデスか?」
「ああ……」
ネオは頷いて、ピアスのボタンからインネットグラスを作動させる。声紋認証を済ませると、遠隔操作で飛行車を呼び寄せた。
ものの五分で、金に光る星のエンブレムの付いた中型の機体が、金属の翼を垂直に広げて空から降り立った。
「オエストロス号4。短い空の旅になる。景色を楽しむ余裕なんてねェ。全速で飛行させる」
「大丈夫かな。ネオの運転で」
リックが隠しきれない心配を口にすると、ネオは頼もしげに親指を立てて歯を見せた。
「俺の運転を見たら、雌鳥だってついてくる」