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R-001  作者: 白宮 安海
第三章 イキル
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第7話 「作戦」

総帥椅子に腰かけたテドウの前に、側近の太った男はロッドの居場所について報告をする。テドウはその報告を聞いてにやりと笑った。

「やはり、離島にいたか」

「どうも監視ロボットにも引っかからないと思いましたよ。それで、いかがいたしますか?」

「戦闘用ロボットを向かわせる」

「離島にですか?まさか破壊なさるおつもりですか?」

「文明とは、壊されて初めて発展するのだ」

テドウは立ち上がると、窓のない白い壁に手をかざした。すると、壁一面が一瞬で透明な特殊ガラスに代わり、己がつくりあげた文明の姿が広がった。

「それなら今すぐ、手配致しましょう。どうせ機械を動かすという事に五分とかかりません。それにしても、総帥。心は痛みませんか?」

太った男はヘラヘラと笑いながら尋ねた。テドウは暫く俯いて沈黙した後、口を開いた。

「馬鹿な息子の始末をするのは親の役目だからな」

冷徹な声で言い放たれた言葉に、男は何とも言えぬ顔を浮かべ「失礼致します」と頭を下げて、部屋から出ていった。


テドウは、再び文明の全貌を眺めた。

「この沈黙の星は、我々に命を与えておいて、何も教えてくれはしない」

間もなくして、空に一つの戦闘兵器が飛んでいき、それから次々と黒い兵器で青が埋め尽くされた。



同じ空の下、ネオ達は、メイン地区から遠く離れたE地区の路地裏にいた。

「ロッドが離島にいると仮定しておくが、そこは人間以外は入れねェ場所だって言うじゃねェか。政府に申請するか?」

ネオはネズミ串を頬ばりながら、離島への侵入方法を考えていたが、一向にいいアイディアは思い浮かばない。そこで、地面に座ってコンピュータ作業をしていたリックは閃いた。

「離島の正門ゲートにはロボットが一体。島の中の監視ロボットは全部で十体。生態認証も僕らじゃパス出来ない」

「やっぱり政府に頼もうぜ。癪だけど。なあ、ルウお前も少しは考えろよ」

ネオに話しかけられても、ルウは瞼を閉じたまま瞑想をしていた。ネオは溜息をついて再び話を戻した。

「はぁ……、で?何かいい案があったか?」

「生態的に問題がない。即ちロボットなら普通に入れるってわけだ」

「へー、じゃあ俺達もロボットに改造されてくるか!よーし行こうぜ」

皮肉っぽくネオは背を向けて歩いていった。

「他のロボットを利用するんだな」

と、最初に理解を示して口を開いたのはルウだった。ネオは思わず足を止めて振り返った。

「その通り。何か他のロボットを使って離島に侵入して貰い、中のセキュリティシステムを壊して貰うんだ」

「ちょっと待った!」

リックとルウは、一斉にネオの方を向いた。

「お前ら本気か?ロボットを仲間にするっていうのか?」

「仲間じゃない。利用だ」

と、ルウは言った。

「そう、利用だ。再利用って言えばいいかな。壊れたロボットを僕が改造する。そうすれば、政府の手も要らないし、僕らが無線で操縦も出来る」

「俺は反対だ。ロボットの手を借りるなんて」

ネオは顔を背けた。こうなると中々意見を覆さないことを二人は知っていた。ルウは説得しようとネオの肩に手を置いた。

「そんな事を言っている場合か?緊急事態だ。ここはリックの意見を採用しよう」

ネオはそれでも、意見を聞き入れずに静かに言った。

「俺は一人でやる。あんな奴らなんて必要ねェんだよ」

二人の元を去ろうとしたネオの背中に、ルウは投げかけた。

「いい加減大人になれ」

怒りと悔しさと情けなさが入り交じった感情に、ネオは顔を歪めて動けなかった。

「ネオ。一人で突っ走って任務を失敗させるのか?それで死んでいった被害者達が納得するのか?自分勝手な考えはもうやめろ。これは遊びじゃない。任務だ」


ルウの言葉が心に突き刺さる。ネオは歯を食いしばった。自分がどれ程身勝手な生き方をしていたのかが思い知らされた。

「お前の言う通りだな、ルウ。悪かった。作戦を否定しちまって。今一番大事なのは、死んでいった奴らの気持ちだけだよな。目が覚めたよ。ありがとう」

ネオは顔を上げて二人に笑いかけた。ルウは最後に軽くネオの肩を叩いて、微笑み返した。

「それじゃあ、壊れたロボットを調達しに行くか」

「その必要はないよ」

「何でだ?ロボットを利用するんだろ」

「9N0S」

リックの言う暗号に、ネオは首を傾げた。その為、リックは分かりやすいように言い直した。

「キュゥ郎」

「キュゥ郎……、ああ!あの古いロボット」

「あいつなら、僕達の言う事を聞いてくれる」

「あんまり信用したくねェけどな……、まあその辺のロボットを使うよりリスクは低そうだ」

「こんな事もあろうかと、これをあのロボットに着けておいたんだ」

リックは腰のホルターから豆粒ほどの機械虫を出して見せた。

「なるほど、追跡虫か。しかし、居場所が分かったところで、素直に受け入れてくれるとでも?」

と、ルウは疑問を口にした。

「あのロボットはネオを助けた。人間に協力って事さ。それに、僕が思うにあのロボットは悪いロボットじゃない」

リックは機械虫を仕舞って、コンピュータ画面に目をやった。

「それなら奴に会いに行こう。さっさとしようぜ。日が暮れちまう」

「心配しなくても向こうから会いに来るさ」

「どういう事だ?」

ネオは不思議そうにリックを見た。リックはピアスからインネットグラスを起動させると、視界に機械虫の居場所をサーチした。

「もうすぐ」


「アレ?あなた方はいつぞやの。コレは何て偶然なのでしょう」

リックが言ったすぐ先に、聞き覚えのある音声がした。ネオとルウは路地裏の入り口に目線をやると、そこにはキュゥ郎が仁王立ちで立っていた。


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