題3話 「拠り所のありか 2」
パリョは短い黒髪を耳に掛けた。
「私が手加減してやったおかげで命拾いしたな」
鼻で笑う女の様子に、ネオは一発殴わってやりたい気持ちになったが、必至に押さえた。自分よりも背が高いという所も気に食わない。
「で、人殺しより重要な目的ってのは何なんだ?」
「そこのロボット、壊すのは止めて貰おうか」
この女何言ってやがるんだ?ネオは益々混乱した。相手も同じ反ロボット連盟であるはずなのに、言っていることもやっている事もめちゃくちゃだ。
「一体どういう事だ?アンタらも連盟じゃねェのかよ」
「いや、私達も同じ反ロボット連盟だ」
「なら規約を知ってるはずだ。持ち主から離れ自由意志を持ったロボットは処分しなくてはならない。レベル1の授業でも習ったはずだ」
「確かに、反ロボット連盟の条約の中に、そのルールは組み込まれている」
「なら、何で俺達を狙ってくるんだ」
パリョはコツコツと、床を二三歩歩くと、ネオの目を見て言い放つ。
「私達はロボットに救われた」
「ロボットに?」
「ああ。ここにいる二人もそうだ。初めはロボットを憎んでこの反ロボット連盟に入ったのには違いない。だが、我々はロボットに命を救われた」
ネオにとって、その感情は理解しがたく、眉をひそめたまま話に耳を傾けていた。
「だから無闇やたらにロボットを処分する奴らを許せない。お前達もな」
パリョの発言を聞いて、ルウは言った。
「理由は分かったが、俺達はロボット連盟だ。あくまで、ロボットを倒す事が目的。それに、他にもチームはいくらでもいる。俺達だけを狙うというのは納得し出来かねるな」
「貴様らAチームは、若い連中の中では成績がトップだそうだが、一方でペナルティの回数も最も多い。害のないロボットまでも倒しまくっているそうじゃないか」
三人は顔を見合わせた。パリョは続ける。
「この国をロボットのない国にしたいのだろう。確かに、自由意志を持つロボットは危険だ。私も多くの犠牲者を見てきた。だが、私はロボットだけが完全な悪だとは思えない」
何も言えぬまま、ネオは拳を握った。自分でも、自分が全て正しいなどとは思っていない。
「ロボットは最早、人間と同じように生活が出来るレベルになっている。孤独な老人がロボットによって生きる希望を与えられ、ロボットを生涯の伴侶にする人間だっている。それでも、お前達はロボットを処分し続けるつもりか。考えろ。本当にするべき事をな」
パリョは、破壊されたロボットを肩に担いだ。精巧に造られた瞳は人間のようにネオを見詰めていた。
「それ、どうするつもりだ?」
「持っていく。修理をしてくれる場所があるんだ」
「そいつは何処にあるんだ?」
「離れ島……。B-side地区。聞いたことはあるだろう。ロボットを製造している場所だ。興味があるなら来てみるといい。少しは考えが変わるかもな」
そう言って、パリョとメンバーの二人は店を出ていった。ぐちゃぐちゃになった店に残された二体のロボットは「つまんない、もう帰ろ」と去っていった。
ネオの後ろ姿に、リックとルウはどう声をかけていいか分からなかった。そんな中、ネオが一番に口を開いた。
「B-side地区に行く」
「分かった」
リックは返事をしながら頷いた。そして「ロッドを探しに行くんだね」と付け足した。
「ああ。それが俺達の任務だ」
いつもより穏やかな口調でネオは告げた。
「俺は他人の言葉より、自分の気持ちを信じる。それがどんな結果になろうと、俺の未来は俺が決める……」
ネオは、銃をマスターに向かって構えた。マスターは何食わぬ顔でこちらを見ていた。ネオは指に力を込め、光線を放った。マスターの頬を掠って、光は後ろのボトルを割った。
「嘘だったんだな。よく出来てやがる」




