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R-001  作者: 白宮 安海
第二章 迸る粒子達よ、それぞれの道へ進め
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第27話「真実からの伝言 8」


映像が遮断され、いつもの総帥室の椅子に座っているテドウの姿はやけに老けて見えた。テドウは口を開く。


「これが、私の現実(リアル)だ」


三人は言葉を無くし、まだ過去の出来事に入り込んでいたが、テドウが「今後の任務だが」と説明し出すと、「待てよ!」と、ネオから切り込んだ。


「納得いかねェな……。何で、ロッドをロボットなんかにしたんだよ」

怒りを露にするネオの声に、テドウは首を傾げた。

「過去の通りだ。私はあの子に未来を与えてやった。これは私にしか不可能な事だった」

「お前のせいで、ロッドはあんな事になっちまったんじゃねェか!未来を与えてやった?お前が孤独に耐えられなかっただけだろ。そんなの、ただのお前の自己満足じゃねェか!!」

リックとルウも、ネオの言葉に賛同した。憤るネオに対し、間を開けてから、テドウは静かに告げた。

「お前もそうしたはずだ。母親が死んだ時、思わなかったか?母親が生き返ってくれればなあ、と。私それを実行した。お前は何もしなかった。いや、出来なかった。お前の力不足でな」

母親を守れなかったという事実、それをテドウに指摘され、ネオは完全に頭に血が登った。

「ふっ、ざけんなァァ!!」

ネオの掌から煙気が乱れ出た。その空気の乱れを察し、テドウは少し身じろいだ。が、ルウとリックは後ろからネオを抑える。

「ネオ!落ち着いて!彼奴にそんな事をしてもどうにもならないよ。ネオが損するだけだ」

「くっそ!!お前だけは絶対に許さねェ!あいつを変えるくらいなら、自分が変われば良かったんだ!」

ネオは息を巻いて、声の限りに叫んだ。テドウはネオの言葉に、少し胸が痛かった。平静を保とうと息を吐いた。

「何と言われようが構わん。こうなった今、私には果たすべき義務がある。お前が吠えている今も、ロッドは何をしでかしているか分からん。いいか、ロッドを探し出せ。これは私からの命令だ。逆らえば重い罰が待っているぞ」

ネオは何も言い返すことなく、息を荒らげたままテドウを睨みつけた。

「お前が探せよ。クソッタレ」

「ネオ!」

リックはこれ以上言い合いするのは、ネオにとって良くないと、引き止めた。ネオは舌打ちをしながら、悔しそうに俯いていた。

「探した後、アンタどうするんだ?アイツのこと」

この質問の回答に、テドウは沈黙をした。しかし僅かに眉を寄せて、口を開いた。

「故障したロボットは、二度と起動する事はさせん」

「つまり、殺すって事か」

あまりに重い現実に、ネオは言葉が詰まりそうになる。

「アンタはいいのか?息子を二度殺す事になる」

「お前の知った事ではない。お前達はただ、私の言う任務を遂行するだけだ。今まで、どれだけのロボットを倒してきた?考えるな。自分が愚かでないと自惚れるから躊躇うのだ」

テドウは今まで生きてきて、人間のあらゆる側面を知っていた。だが、ネオにはまだ、そんな非情に徹し切れる程大人ではなかった。心のどこかで、テドウの言葉を否定する自分がいた。

「なるべく素早く任務を遂行しろ。……さもなければ、この国は破滅する」

「俺達はテメェに利用されてるだけか」

「どうとでも捉えるがいい。だが、連盟を抜けて、お前達に居場所はあるのか?独りぼっちだったお前達に。私の元にいれば不安に苛まれる事もない。任務を遂行する。ただそれだけだ」

「ああ、よく分かった」

ネオは静かに言い残し、一人部屋を去ろうとした。それに続いてリックとルウも足を動かした。扉の前でネオは振り返った。

「俺はアンタみたいにはならねェ」


密かな決心が瞳を燃やしていた。そして三人はそのまま部屋を後にした。


残されたテドウは、指令室の壁一面に広がる景色を眺めた。

「それが正解だ。ネオ」

と、一言呟いた。空には小型の警備ロボットが煩く飛び回っていた。

「さあ、お前達は何を見せてくれる。私の知り得ぬ未来を築けるのか……」




扉を出てすぐ、ネオは壁を勢いよく蹴りあげた。

「くそっ!!」

やり場のない気持ちがこみ上げ、頭を押さえ込んだ。

すると向こう側から、廊下をコツコツと歩いてくる音が耳に入った。

「貴様らも総帥室に呼ばれたのか?」

話しかけられたネオは顔を上げた。

そこには他のチームのメンバーらしき連中がいた。

先頭には、歳上の大人びた女がおり、黒地のピタッとしたスーツを身にまとっていた。赤い襟の下には、見覚えのある勲章があった。妙な気迫を身にまとっていたのは、他のメンバーも同様だった。顔半分が機械の、ガタイのいい男や、フードを深く被っている子供のような男。誰も彼も異様な雰囲気だった。


「だったら何だってんだよ」

ネオは威勢よく返答した。だが、女はネオに近づくや否や、耳元で囁いた。

「ネオ。貴様は、いつか私が殺してやる」

「!」

それだけ言うと、女はふっと笑み、総帥室へ消えていった。

「大丈夫か?ネオ。あいつらもしかして……」

後ろから心配そうにリックは声をかける。

「あの勲章……、特殊チームの奴らだ」

ネオはさっき目に入った勲章にピンと来た。特殊チーム。極めて優秀な人間だけが入る事を許される、反ロボット連盟の中でトップの存在。そのメンバーが何故自分に殺意を持っているのかが、ネオには分からなかった。

「あいつらにもロッドの捜索をさせるつもりなんだろうな。リーダー、ルウ、僕達も急ごう。奴らの手に渡ったら、何をするつもりか分かったもんじゃない」

「もう、あいつらに任せたらどうだ?」

突然、ネオが口にした言葉に、信じられないようにリックは返した。

「トルネの事忘れたのか!?お前、それにあんな奴らの言いなりになるつもりなのか?」

「そうだ、ネオ。それに、俺達がやらなければ、事態はもっと深刻化する」

ルウも言葉を重ねてネオを説得しようとする。

「過去には戻れねェんだよ。俺が何かをして、何かが変わるのか?」

自信を失っているネオに対して、リックは胸ぐらを掴んで頬を勢いよく叩いてやった。

「変わるか変わらないか、やってみなきゃ分からないんだろう?」

それは、普段からネオがよく口にする言葉だった。

「悲しいのはお前だけじゃないんだぞ、ネオ!」

リックは必至な声でネオへ訴えた。叩かれた頬の痛みにネオはようやく気を取り戻した。

「悪い……。お前らの事も考えずに。行こう。俺達の手で変えてやろう」

ネオは自分に言い聞かせるかのように言いながら、歩みを進めた。

「三人居れば何とかなるだろう。今までのようにな」

ルウは、ネオの肩を叩きながら言った。

「リーダーをしっかり支えるのが僕らの役目だからね」

リックも、反対側からネオの背を叩いた。

喪失感に蝕まれていたネオの心に、僅かに活力が漲ってくる。

「ありがとな。二人とも。俺について来てくれ」

ネオは二人が自分と一緒にいてくれる事に心底感謝した。


眼差しは遥か遠くを目指し、踏み出す一歩はいつも以上に強く重かった。指令室を出るまでに、誰も後ろを振り返る事はなかった。




第二章 終

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