第26話「真実からの伝言 7」
朝、テドウは自分の研究所から、シュケーツの研究所まで息子を持ち運んだ。
初めてロッドを見たシュケーツは、何とも言えない顔つきで、ただそれを黙って見つめていた。
リアンは自分の研究所でまだ眠っている。もしも、彼女がガラスの筒から取り出せる頃には、彼女の寝室にスターチスの花を飾ろうと決めていた。そして永遠の愛を誓う。
その目は野心に満ち溢れていた。シュケーツは、テドウを見て一抹の不安を覚えた。
「最期の忠告じゃ。それを造るのは止めておけ。今ならまだ間に合う」
作業台の上に寝かせたロッドを、指さして言った。だが、テドウの心は揺らぐはずもない。
「もう遅い……」
そう言って、薄いレーザーゴーグルで自身の目を覆った。
テドウは、空中で手を僅かに泳がせた。その様子を不審に思ったシュケーツはハッとした。
「お前、まさか」
「私にはもう、何も見る必要はない……。ロッドとリアン以外は」
とんでもない人間が育ったものだ。と、シュケーツは思った。
「後戻りは出来んぞ」
「知っていますとも。誰よりも……」
テドウは心の中で、ドウリやリアンの姿を思い浮かべた。二人共、楽しげに笑っている。
「どんな事が起ころうとも、この決意は揺らがないだろう」
どこかに引き戻れる道があるのだと探したが、どこにも無かった。後は進むしか道はない。未来を目指して。




