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R-001  作者: 白宮 安海
第二章 迸る粒子達よ、それぞれの道へ進め
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第24話「真実からの伝言 5」

東地区のTタワー。そこは、この街で有名な観光地でもあった。星と月が戯れるオブジェが、タワーのてっぺんで光っている。戦争後、再び美しく外観を建築した事に、驚きを隠せない。

だが、それはこの建造物に限った話で、この東地区一帯は治安が悪く荒れていた。テドウは、交通止めで一時足止めを食らったが、通してくれそうにないと分かると構わず車を前進させた。後ろから警報が鳴ったが、気にしない。立ち入り禁止と表示された標識へ車のまま突っ込んだ。

科学施設の辺りは未だ工事の途中であった。建物の前で車を停めると、数名の警官が自分を見つける声がした。テドウは、車から降りて空砲を警官目掛けて撃った。怯んだ隙に、建物の隙間を身体を狭めながら通っていく。息苦しさを覚えながらも前へ進んでいくと、隙間の入口で警官が銃を構えていた。

「止まれ!止まらないと撃つぞ!」

何とか隙間を通り抜けた頃、銃声が二発響き渡った。間一髪免れ、ハァハァと胸を上下させながら、向こう側を見た。

一旦呼吸を落ち着かせながら、辺りを見渡すとそこは行き止まりだった。そこで、ライトを照らし地面を確認すると、地下水路への入口らしき扉があった。

ライトを口にくわえ、重たい扉を両手で開かせた。金属の擦れる音がして、暗闇へ続く入口が現れた。ライトを手にもち、中を照らすと下に降りる為の梯子があるのが見える。

一体どこまで続いているのか、光の続く範囲では終わりが分からなかった。実際に降りてみるしかない。テドウは再度口にライトをくわえると、慎重に梯子を降りていった。

結構な深さを降り切ると、無事に両足は地面へ着地した。湿っぽい、陰気な水の臭いが篭って、水滴の落ちる音が時折聞こえてきた。

(こんな所、一刻も早く出たい)

ドウリから言われた事を頭の中で思い描きながら、濡れた細い通路を歩いていく。水路の中には色々なものが浮かんでいた。中には動物の死骸もあった。

暫く歩いていくとドウリの言った通り、枝分かれした道が現れ、壁に管が空いてあった。管の中へ侵入し、奥まで進んでいくと、頑丈そうな扉に施錠がされていた。

(これか、確か暗証番号は……)

「8…59…6gh」


ガチャリ。施錠が外れた。扉を押すと、地面に穴を掘ったかのような空間が広がっていた。

ライトで照らすと、小さな秘密の倉庫とでもいうように、部品や工具なども置いてあった。

見渡す必要もなく、目当てのものはすぐ真下に転がって、つま先に当たった。

「水睡総理」

ゆっくりと顔を近づけ、ライトを照らす。ニュースで見た事のある顔が、静かに瞼を閉ざしている。思わず本物の人間ではないかと疑いそうになった。上等な靴とスーツまで装着したままだったから尚更だ。それ程までにリアルに造られているソレに、不気味さを覚え、触れるのに少し躊躇う。

「大事なものは、大体ここか、ここだな」

テドウは、頭部と心臓部を照らした。まず始めに、水睡総理の頭髪をまさぐった。すると、すぐに指に引っかかる感触を見つけ、その箇所の髪をかき分け凝視した。テドウの勘は正しく、内蔵データを取り出す小さなボタンが見つかった。ただし、0.3ミリの穴の中に針で差し込まなければいけなかった。

「これでいけるか」

テドウは、水睡総理の襟元に刺してある赤のスワロフスキーの付いたカラーピンを引き抜いた。キャッチ部分を外すと、丁度0.3ミリ程の先端となった。それを取り出しボタンへ刺すと、ウィーンと音を立てて顔面部分が外側へ開いていく。機械の中身がさらけ出され、中央に映像データ装置がはめ込まれていた。


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