第10話 「存在理由」
数週間後、ドウリが戦に繰り出しリアンがまだ眠りについている時刻に、あの扉の中へ忍び込んだ。あいも変わらずに機械の無機質さに満ちたこの部屋の中は不思議と居心地が良かった。
台の目の前に椅子を置いてその上に乗る。ほとんど完成しているロボットを覗きこむ。今にも動き出しそうな存在感に、何分でも眺めていたい気持ちだった。金属の頬へ触れてみる。冷たく何の感動も帯びない。それが己と投影して、どこまでも安心感を覚えた。
前々から、冒険地図のように読みふけっていた機械の詳細な設計資料を手にとった。
若き脳は、ドウリが築いていった知識を、種を撒いた土のように吸収していった。一ヶ月余りにして、既に基礎知識はおろか、機械哲学及び科学技術までもを理解するようになった。テドウにとって、それは夢のようだった。勉強をする度に未来が明確に見えていくように思えた。ドウリの造ったロボットの正体に気づいた時、テドウは絶望し、落胆した。
こんなものがドウリの言った平和兵器だったのか。こんな下らない玩具で、希望を与えようと考えていたのか。まるで子供騙しじゃないか。ほとほと理解が出来なかった。殺戮、盗み、暴動、これらがこんなもので治まるものならば、話は早い。
テドウはドウリの隙をついて、勝手にロボットの内蔵を弄くり回して、改造をしはじめた。ドウリは間違っている。俺がもっとちゃんとした平和兵器につくりなおしてやる。
単純な正義感と、未熟な思想での行いであった。
テドウは、ロボットの存在理由が、ドウリの言う“平和の象徴”ではないと考えていた。そんな生易しいものでは現実は変えられない。テドウはそれを“破壊の象徴”に変えようと目論んだ。破壊と再生の神、シヴァのように何者も逆らうことが出来ない。完全無敵なロボット。人間は皆ひれ伏すに違いない。テドウは一心不乱に指先を動かした。純粋な瞳の中は、まだこれから先起こる不穏な未来を予測できなかった。




