幕間――我慢、意識
【我慢】
ウインドウに並べられたお菓子の群れに、涎が出そうだと那津子は思った。
「もう出てるわよ。拭きなさい」
「あ! うっそ、わわ! 早く言ってよ、羽野」
「今言ったわ。那津子、あなたダイエットしてるんじゃなかったの?」
羽野が呆れた様子で那津子を見た。彼女がダイエットするといったのはつい昨日のことだ。受験勉強で家にこもることが多くなる。外に出るとどうしても甘いものに目が行ってしまうから、今の間に勉強とダイエットを一緒にするのだと意気込んでいた。それなのにもう甘いものに目が行っている。
「だってー、美味しそうなんだもん。ううー食べたいな」
「昼にセイのお菓子を食べたでしょう?」
「あれ、美味しかったわあ。でもこれも食べたいのよ」
「那津子ってば、仕方ないわね……」
溜息一つを吐いて、羽野は那津子に笑う。
「ベリータルトとレアチーズケーキ買ってきて」
「え?」
「持ち帰りね」
「お、おごり?」
「二つまでよ」
那津子の期待に羽野はピースで返す。それを見て、那津子はガッツポーズを作って、全身で喜ぶ。
「きゃー! 羽野ってば太っ腹。大好き」
「はいはい」
那津子に財布を手渡す羽野の表情はやさしい。
【意識】
なんで気付いちゃうんだろう。
「何かあった?」
訊ねると目を丸くして何もないと目を伏せる。それでは何かあると言っているようなものだ。
気付けなければよかったのに、気付いちゃうんだ。だって伊崎をまだ、俺は好きだから。彼女を見ていると伊崎はまだ気付きたくないんだなあって思った。だから俺は伊崎が言わない限り教えない。
ガキだと言われてもいいさ。宮田へのちょっとした意地悪くらいいいじゃないか。口惜しいけれど、哀しいけれど、もう――。
伊崎の中に誰がいるのかも、気付いちゃったんだから。




