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The DOORs  作者: 海鳥
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最初の扉 第三話 ~首相官邸前にて~

 「疲れたな……」


 子供警察官に先導され、歩くこと3時間。やっと首相官邸にたどり着いた。この警察官も、よくこんなところまで二人乗り自転車で案内しようと思ったもんだ。その発言のせいで、わりと近くに官邸があると思い込んでしまったではないか。


 「やっとついた……」


 隣でノアも、肩で息をしている。全力疾走からの長時間徒歩は俺でも辛いからな、当然か。

 同じくぜいぜいと息の荒い様子で、子供警察官は言った。


 「長時間歩かせてしまって申し訳ない。今官邸に入って、総理の秘書に事情を説明してくるので、しばらく待ってもらえますか。えーと……お名前は……」

 「真泉新まいずみしん、だ。」

 「真泉さんですね。では、しばらくここでお待ちください」


 そう言って警察官は中へと入っていく。しかし、首相官邸とは、高層ビルが大量にひしめき合っているこの都会に、ずいぶん不釣り合いな建物だな。庭に植えられている大量の樹木が、なにかの皮肉にさえ見える。というか、あまり手入れされていないのだろう、枝がさまざまな方向に自由な伸び方をしていた。


 「いやしかし、マズいことになったと思ったが、一応なんとかなったな」


 俺はノアに話しかけた。


 「そーだね。私もさすがにノープランすぎたよ……」

 「まあ、この国で俺たちの存在が異端だなんて、実際目で見る他に確認しようもないし、仕方なかったんじゃないか? 気にすることじゃない」

 「……慰めてくれてるの?」

 「事実を述べたまでだ」

 「ふふーん」


 ノアは少し嬉しそうな顔をした。これからのことを考えると、あまり調子に乗ってもらっても困るのだが、まあ俺もこいつに説教をする立場ではないしな……。


 「それにしても暑いな。ある程度移動で体があったまってるってのもあるが、この気温は初夏ってレベルだぞ」


 俺がそういうとノアが何か小さなものを取り出した。懐中時計の形をしているが、時計の針がありそうな場所にはなにか変った画面が写っている。


 「それは?」

 「あ、これはね、今いる時代のだいたいの時間を知れる時計……みたいなものだよ。えっと……うん、やっぱり今は7月の初めだね」

 「道理で暑いわけだ。俺がいたもともとの時代は10月だったぞ。この気温差だと、体を壊しそうで怖いな……」


 すると、ノアが不思議そうに時計を見つめてつぶやく。


 「おっかしいなぁ。普通だったら飛ばされる時代は、どれだけズレても一か月の範囲に収まるはずなんだけど……」

 「飛ばされるって……もしかしてノアもどんな時代に移動するのか事前にわかってないってことか?」

 「うん、基本的に私たちは上司……天使長って言えばわかりやすいかな? その、天使長の命令に従うことになるから、おかしなことが起きてる時代に強制で派遣されるの。任意での時間移動もできないわけじゃないけどね。それで新をパートナーに選んだわけだし」

 「ん? それって、ノアは俺の時代の人間じゃないってことか?」

 「……それはないしょ!」

 「なぜ隠す……」

 「いーの! それよりもおかしいのは、今私達がどうして10月から7月に飛ばされたのかってことで……。世界がおかしな方向に進んでたら、私達がどうにかしないかぎり、ずっとおかしなままだから……普通だったら今この時代で言う来年の10月に飛ばされるはずなんだけどなぁ……」

 「んーと、それじゃ遅いんじゃないか? 来年の10月までにこの時代で再起不可能なほど大きな出来事が起こるとか」


 自分で言ったことだが、これってかなりマイナス思考だな……。まるでこの先とんでもないことが起きるって言ってるようなもんじゃないか……。

 ノアも不安そうだ。フォローしておこう。


 「ま、今考えてもわからないことはわからないまんまだ。気にせず行こう。たいしたことじゃないかもしれないし」

 「うん、そうだね」




 「お待たせしました」


 会話を済まし手持ちぶさたな感じになっていたところに、秘書と思われる人物が現れた。もちろん子供で、眼鏡をかけて少し大人な女性を演出しているようだが、ノアと比べても子供らしさが抜けきれないでいる。


 「私と比べないでよっ!」

 「うおっ心を読まれた!」

 「そんな交互に見比べてたらわかるのっ!」


 しまったそんなミスをしていたか!


 「……オホン」


 ふざけ合う俺達をまるで急かすかのように秘書が軽く咳払いをする。少しイラッとしたものの、それを聞いて、俺達は秘書の次の言葉を待った。


 「ご案内いたします」


 この秘書は明らかにムッとした表情で、俺達を官邸の中へ案内し始めた。こういったところも、子供相応と言うべきか。

 そんな秘書の態度に、俺はこれから会う総理大臣も、もしかしたらこんな感じなのではないかと憂慮しながら、歩みを進めていった。


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