最初の扉 第一話 ~子供の国~
「で、俺の最後の質問に答えてくれ。俺はこの未来で何をすればいいんだ?」
俺はノアにそう尋ねる。するとノアは、少し困ったような顔をした。
「うーん……具体的に何をすればいいのかは、実はまだ私もわかんないの……」
「ノアがわからないって、ただでさえ分からないことだらけなのに……」
何をすればいいのかすらわからないとは思わなかった。困った。出鼻をくじかれたというか……
俺が落胆の色を隠せないでいると、ノアが慌てて補足した。
「まだ、わかんないってだけで、なにもかもわかんないわけじゃないよ! 簡単に言うと、この今いる時代は今までいたよりも未来なんだけど、なにかおかしなことが起こってるはずなの。そのおかしなことを解決するのが目的」
「おかしなこと?」
「うん、たぶん少し調べればすぐわかるような、新のいた時代の常識と大きくかけ離れたなにかが起こってるはずなの」
「そういえばノア、世界の修正とか言ってたな……っていうかなんで、そんなおかしなことが起こってるんだ? 普通じゃ起こらないようなことが起きてるってことだろ?」
「えーと、私のこと、新には天使って説明したよね? それを邪魔する存在だから……そう、悪魔! 悪魔がいたずらしてるの!」
「あ、あくまぁ?」
また非現実的な存在が出てきたもんだ。
「って、問題を根本的から解決するなら、その悪魔を倒さなきゃいけなくなるんじゃないか?」
悪魔と戦うなんていくらなんでも勘弁だ。そんなものはRPGのゲームに任せておけばいい。
ノアは首を横に振って否定した。
「別に悪魔は倒さなくても、おかしな方向に進んでる世界を正しい方向へ導けば、大丈夫なはず……だったと思う、たぶん。悪魔も私みたいに、新くらいの時代から人間を連れてきて、間接的にしか関係していないはずだから……」
「うーん……説明がざっくりしてるな。なんというか、わかりにくい」
「説明しづらいのっ! ロンよりショーコって言うし、実際にこの時代を修正しちゃうのが一番手っ取り早いと思う!」
「その発音だとショーコがロンに勝っているように聞こえる」
「んもうっ! そんなことはどーでもいいっ! ほら、新。ついてきて! 調査するよ!」
まあ、たしかにノアがいうことも一理あるか。実際に体験したほうがなにをするにも手っ取り早い。体験する時点ですでに危険な物でなければ、だが。
「そうだな。とりあえず、この時代の人を探そう。とはいえ……この辺りはやけに人気が無いからな。少し移動したほうがいいかもしれん」
すると、ノアが言った。
「うーん。もうちょっと都会っぽいところに転移してみようか」
そう言うとノアは手を前にかざす。
「何をしているんだ?」
「いま話しかけないでっ! 集中したら一瞬なんだけど……。よしっ、えいっ!」
ボワン!
ノアの掛け声の後すぐ、効果音と白い煙をたてながら、俺たちの目の前に大きな扉が現れた。
「おおっ、びっくりした」
「私達以外の人間を探して扉を開いたから、この扉の先にはきっと誰かいるはずだよ」
「ここに来る前にそうしてればよかったのに」
「保健室から飛び出す時はいそいでたのっ! 集中すればこのくらいわけないんだから!」
「わかったわかった。よし行くぞ、ノア」
「もうっ、新のほうからいいだしたんじゃん……」
俺は扉におそるおそる手を伸ばし、ノブをつかむ。そして扉を開けて、扉をくぐり抜けた……。
「……これは」
また驚かされる俺。
「こんなことになってたんだ……」
ノアも少し驚いている。
扉がつながっていた場所は都市、ビルが立ち並ぶ大都会のようだ。多くの人がそれぞれ目指す場所へ歩いて向かっているが、明らかにその光景には違和感があった。
「ガキしかいないぞ……」
そう、その大都会を闊歩する人間はどう見ても、小学生以下の子供たちしかいなかったのだ___