初日
「そろそろ時間ですね。準備はできましたか?」
「ええ。1週間、ありがとうございました」
この1週間はあっという間だった。
アイリスさんにはイズマイールの常識や戦闘の心得を教えてもらい、俺は地球のことや学んでいた法学や哲学、経済学の話をした。
地上に降臨した後に役に立つとなかなか好評だった。
考えてみれば、アイリスさんが地上に来るのは俺が死んだあとだ。
もう会うことはできない。
「なんか名残惜しいですね。もう会えないなんて」
アイリスさんは悲しげに笑うと
「本当ですね・・・あの、アキトさん。私、本当に本当に心配です。アキトさんは戦闘の経験はないのでしょう?」
確かにそうだ。
いくらチートを貰っても、今のところ役に立つのは身体能力強化だけだろう。その他のチートは後々になって効いてくるタイプだ。
正直、不安しかない。
「正直言って不安です。最初は弱い魔物を相手にして、徐々にレベルを上げていくつもりですが」
商人や農民になる道はない。
商人になるには、どこかの商家で丁稚奉公をした後、伝手を使って商人ギルドから商売の権利を買わなければいけない。
農民になろうにも、自分から農奴になるか、土地を開墾しなければならない。
一度死んだ命、せっかく異世界にきて戦闘系のチートを貰ったんだから、いっちょダンジョンとやらに潜るっきゃない。
転送先にジルコという都市の近郊を選んだのも、ジルコには初心者向けのダンジョンがあり、治安も比較的良い都市だからだ。
「アキトさん・・・私は後の降臨に備えて力をためなくてはいけません。力を与えることはできませんが、せめてアキトさんの心の平穏を祈らせてください」
そっと指輪を一つ渡してくれた。
飾りも何もない、銀色の質素な指輪だ。
「1週間しかありませんでしたが、その指輪に祈りを籠めました。アキトさんが無事に生を全うされますよう」
そういうと、アイリスさんは消えていき、いつの間にか俺は草原の中に立っていた。
空を見ると、ちょうど太陽が昇り始めている。
「さーってと、あっちが東か。ってことはこの道を南にいけばいいんだな」
太陽を左手に見ながら南に歩いていく。
2時間ほどでジルコに着くはずだ。
「2時間も歩くっていつ以来かねぇ」
アキト・ハセベ
人間/エルフ
18歳 男
身長190cm
体重85kg
レベル:1
職業:魔法使いLv1
戦士Lv1
HP200/200
MP150/150
ロッド
布の服
布のズボン
ブーツ
鉄の斧
特殊スキル
デュアルジョブ 身体能力強化 鑑定 経験値獲得量増加 ジョブ経験値獲得量増加 スキルポイント獲得量増加 ジョブ再設定
戦闘スキル(6+ボーナス2枠)
なし
非戦闘スキル
料理Lv2
ジョブスキル
マナボルトLv1
スマッシュLv1