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帝都1階層

 帝都に着いて、早速ガイウスさんとユリアさんを訪ね、旧交を温めた。

 ガイウスさんからは軍への入団を勧められたが、断っておいた。

 この国の軍は政治に近すぎる。

 軍に入って政治に巻き込まれたら大変だ。

 ユリアさんには、ぜひ一度家に遊びに来てください、と言われた。

 そのうちお邪魔させてもらおう。



 しばらくは宿屋暮らしが続くだろう。

 帝都のダンジョンでどれほど稼げるか分からないと、家を借りるにしても家賃の許容範囲が分からない。

 金貨は30枚ほどあるので無理はできなくもないが、このお金は戦力の増強に使いたい。


 宿屋暮らしで不便なのは風呂だ。

 俺は公衆浴場に行けばいいが、シルヴァーナには宿で湯を貰うことで我慢するしかない。

 尤も、行水できるくらいの大きさのたらいにお湯を貰えるので、不潔という訳ではない。

 最初に頭を洗ってやり、その後たらいに入ってもらって背中を流してやれば、かなり清潔になる。

 

 昨日も親切心から行水を手伝った。

 親切心からである。



 今日は早速、早起きして迷宮に向かった。

 迷宮入口の屋台で、いつも通り昼飯用のナッツバーとお茶を買い、1階層へワープした。


「おお、これはすごいな」


 思わず感嘆の声を上げてしまった。


 帝都の迷宮は、天井と壁がクリスタルで出来ている。

 クリスタルの内部には、青く発光する流体が流れていて、ダンジョン内は青ざめた光に照らされていた。 

 

 迷宮の構造もジルコのように一本道ではない。

 通路と小部屋が複雑に配置され、何も準備していないと迷ってしまうだろう。


 早速俺たちは迷宮用コンパスを取り出した。

 迷宮内では東西南北が意味をなさないが、このコンパスは常に入口の石碑の方向を指し示してくれる。

 このコンパスを持ってマッピングを怠らなければ、入口の場所が分からなくなるということはないだろう。


「よし、行こう、シルヴァーナ。順調にいくようなら、迷宮内で昼飯を食って、そこから帰ることにしよう」

「了解しました、ご主人様」


 自分とシルヴァーナにアクセルを掛けて、ジョブを魔法使いと剣士に付け直す。

 ロッドとスパタを握りなおして、早速一つ目の部屋に入った。


 出てきたのは、2Mほどの粘土製ゴーレムだ。

 早速、鑑定をかける 


 クレイゴーレム Lv10

 

 初の格上との戦闘だ。


「集え マナストライク」


 早速先制攻撃をかける。

 マナの砲弾がクレイゴーレムの腰のあたりに命中し、相手をノックバックさせた。

 腰の左側が抉れているが、致命傷にはならないらしい。


 クレイゴーレムが俺のほうに向かってきたタイミングで、シルヴァーナがその左横から急襲を掛ける。

 抉れた箇所を更に深く切り裂くと、反対側へ駆け抜けて行った。


 今度はクレイゴーレムがシルヴァーナに向かっていく。

 少し距離を取って、もう一度傷口にマナストライクを叩きこんだ。


 何度か傷口を狙って攻撃を加えると、クレイゴーレムの胴体が、左わき腹から左足の付け根に掛けて更に抉れた。

 左足を失ってクレイゴーレムが倒れる。


 そのまま走り寄って、立ち上がろうともがいているクレイゴーレムの首元に、思いっきりスパタを突き刺した。


 が……剣が抜けない!


 クレイゴーレムが大きく腕を払ってくる。

 とっさに剣を手放し頭部を防御したが、衝撃でよろめいて尻餅をついてしまう。

 杖も取り落としてしまった。


「ご主人様!」


 シルヴァーナはそう叫ぶと、ゴーレムの懐に一気に走り込んだ。


「突くな!斬れ!」


 そう叫ぶと、シルヴァーナはゴーレムの胸元を真一文字に斬りつけ


「貴様ぁぁ! 死ねぇぇぇ!」

 

 その場でもう1回転して同じ場所を切り裂いた。


 シルヴァーナが飛び退くと、やっとゴーレムが光となって消えていった。

 カラン、と音を立ててスパタが床に落ちる。


「危なかった……。助かったよ」


 そう声を掛けると、シルヴァーナが心配そうに見てくる。


「大丈夫だ、骨も折れていないようだ」


 全身をチェックして怪我の有無を確かめる。

 ただ、HPは一撃で2割強も失っている。

 目立った外傷はないが、相当に強い衝撃を受けたらしい。

 連続で攻撃を受けていたら危険だった。


 武器とドロップアイテムを拾って通路に戻る。

 ドロップアイテムは粘土と魔石だ。

 モンスターのレベルが高いせいか、ジルコの魔石より透明度が高い。

 

 通路に戻ると、急いでジョブを付け替えて小ヒールで回復した。

 1戦でMPが半分以上無くなっている。


「ちょっと休憩にしよう」


 そのままお茶を取り出してヘルメットを脱ぎ、MPを回復させる。


 今回の戦闘は反省すべき点が多かった。


 まず、ゴーレムが大勢を崩してから、近付く必要がないのに接近戦を挑んでしまったことが問題だ。

 迷宮内ならMPはすぐ回復するのだから、魔法を連射して片付ければよかったのだ。


 次に、突きを使ったのが失敗だった。

 突きを使うなら、確実に致命傷を負わせるか、その後の反撃も考慮して動かなければならない。


 最後に、攻撃を食らって杖を手放したのが頂けない。

 杖を持っていれば反撃できたはずだ。


 今後は戦闘中にジョブを付け替えるのも視野にいれるべきだろうか。

 ただ、俺が攻撃を食らった場合、その場でジョブを付け替えてヒールというのは危険すぎる。

 連続して攻撃を受けかねない。


 そんなことを考えていると、MPが全快した。


「もう大丈夫だ」


 シルヴァーナの頭をゴシゴシと撫でて、力こぶを作ってみせる。

 尻尾がパタパタと揺れた。


「もう少し潜ろう」


 そう声を掛けて、シルヴァーナにヘルメットを被せた。 

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