初陣
次の日は迷宮用の装備品を揃えることにした。
まずは武器屋だ。
「シルヴァーナは得意な武器はあるか?」
「狼族の戦士は大武器という両手持ちの武器が得意です」
そうか。
盾役が欲しかったんだけどな。
前衛がいるだけで違うだろうか。
現在、俺が持っている武器は両手持ちできる剣と片手用の斧、それにロッドだ。
魔法使いのジョブは常に付けているので、左手にロッドを持ち右手に武器を握る八つ墓村スタイル異世界風である。
この状態から剣を使おうとすると、一度ロッドを仕舞ってから剣を両手に持ち直す必要があり、ちょっと使いにくい。
今まで持っていた剣を下取りに出して、片手で扱えるスパタという鉄の直剣を購入した。
シルヴァーナ用には身の丈ほどもある鉄の大剣を購入した。
身幅の広い分厚い大剣だ。
軽々と振り回していたので扱えるのだろう。
スパタが銀貨10枚、大剣が銀貨15枚だった。
次は防具屋だ。
「そういえばシルヴァーナ、防具は革と金属どっちにしようか」
「そうですね……ご主人様は魔法使いですので、革か布の良い物を選ばれてはいかがでしょうか?」
「シルヴァーナはどうする?」
「私はご主人様の後に。余ったもので結構です」
あれ?
いまいち会話が通じないな。
「えーっとそうじゃなくて、シルヴァーナは革と金属、どちらでも装備できるか?」
「は、はい。戦士ですのでどちらでも装備できます」
「金属のほうが防御力は高いよね?」
「はい。革防具でも金属防具より高い防御力を持っているものもありますが、そういった品は高級品です」
「そうか、じゃあ俺も金属鎧にしよう」
「さて、どれがいいだろう」
「ご主人様、私たちはまだLvも低いですし、チェインメイルあたりが無難かと」
ふむ……。
半袖で腰回りまで裾のあるチェインメイルが大量に置いてある。
持ってみるとそこそこの重量だが、他の金属鎧と比べれば軽い。
迷っていると店員が来た
「お客様、本日はチェインメイルが大変お買い得となっております。軍のほうで制式採用され、その影響で大量生産されたことにより、値段が下がっております」
なるほど……親切な店員さんだな。
「それならチェインメイルを貰おうか。あとは籠手と頭装備も探しているんだが」
そう言うと店員さんが次々と品物を勧めてきて、あっという間に一式揃ってしまった。
籠手はチェインメイルと同じく、細かい鎖で編まれたチェイングローブを選んだ。
頭には薄い鉄製のヘルメットを被った。
内側に綿入れが付いていて、意外と被り心地は悪くない。
これで黄色だったら、まんま工事帽だな。
シルヴァーナが被ると、頭の上の三角耳がペタンと寝てしまう。
問題だ。
シルヴァーナの獣耳が見えなくなってしまう。
フサフサ尻尾だけで我慢するか。
そういえば尻尾に防具っていらないんだろうか。
一人頭銀貨15枚、二人で合計30枚だった。
まとめ買いしたのでサービスに幅広の頑丈なレザーベルトをおまけしてくれた。
装備を吊り下げるリングもついている。
腰の後ろ側にナイフを刺し込み、左側にロッドとスパタを刀の大小のようにつけた。
厨二心が刺激されてニヤニヤしてしまう。
午後からはシルヴァーナのレベル上げだ。
最初は見ているように指示し、廊下側の扉近くに待機させる。
俺がさっさと倒してシルヴァーナに経験値を稼がせる作戦だ。
簡単に倒せるウォルナットホロウを相手に、一気にレベルを上げていく。
格上を相手にしたせいか、物凄い勢いでレベルが上がり、すぐにベースもジョブもレベル3になった。
一度入口に戻り、1階層に入りなおす。
「それじゃシルヴァーナ、今度はここのスライムをソロで倒してみて」
「はい!」
そう言うと、シルヴァーナは軽く助走をつけてスライムに近寄ると、全身のバネを使って飛び上がり
「消し飛べぇぇ!!!」
縦回転してそのまま大剣で叩き斬った。
一撃でスライムが光になる。
「……」
「……」
え?
「……、ウフフフ、アハハハハ!」
あれ? シルヴァーナさん?
「アハハハハ! ご主人様! すっごく楽しいです!」
そ、そうですか……。
「こう! ブンって振ってドカッとやると、スカーッっとします!」
シルヴァーナ、いやシルヴァーナさんの目が爛々と輝いている。
尻尾もこれまでにないくらい振られている。
急いでシルヴァーナのステータスをチェックすると
シルヴァーナ
レベル:3
職業:銀狼戦士Lv3
状態:高揚
特殊スキル
女神の加護:ブレイブハート(戦闘時常に高揚、恐怖・混乱無効)
これかぁ……。