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モフモフ

 

 シルヴァーナは踝丈の麻のチュニックにサンダルという服装だった。

 このあたりの一般的な女性の服装だろう。

 服屋で尻尾用の穴を加工してくれるのかな。

 

 モッフモフだ。

 モフモフしたい。


 ペッタペッタとサンダルが音を立てる。

 その音に合わせて尻尾が左右に振れている。


 モフモフしたい。


 小さな手荷物を持っている。

 本当に身一つだな。

 今日は色々と買い物に行く必要があるだろう。


 とりあえず食事だ。

 女性と出かける時は食事しておけば間違いは少ない。

 女性誌にも書いてあった。

 俺もいいかげん、マニュアル頼りな男である。

 

「そ、そうだ。少し早いけど昼ご飯にしないか」

「はい、ご主人様」


 ご主人様か……。


「さて、ここにしよう」


 店もちゃんと下調べしておいた。

 地球に居た頃は、女性と食事するときは情報誌を読みまくって予習していた。


 情報誌(笑)

 おい、今笑った奴。

 情報誌舐めんなよ。

 マニュアルの威力はスゲーぞ。


「では、私はここでお待ちしております」


 いや、そういうのいいから。

 予習してきちゃったし。


「いや、できれば一緒に食事を取って欲しい。そちらのほうが俺もありがたい」


 そんな恐れ多い、なんて言ってるけど尻尾がそわそわしているぞ。

 嘘の付けない子だな。


 この店は料理もさることながら、パンがかなり美味しい。

 焼き立ての素朴なパンに、新鮮なバターと蜂蜜がついてくる。

 クルミ入りのパンも人気だ。

 クルミ……。


 パンにバターと蜂蜜をたっぷりつけて渡してやる。

 口に入れた瞬間、尻尾がピンッと立った。


 ハグハグと夢中で食べている。

 パタパタと尻尾も激しく揺れている。 

 

 女の子が美味しそうに食事をしている姿は魅力的だ。

 俺はその姿を眺めるのが大好きだったりする。

 餌付けしている気分になる。


 甘い物好きなのかな?

 ほーれほれ、もっと食べなさい。


「お゛い゛し゛いでふ~~~」


 ごめん、お茶飲んで。




「ご、ご馳走様でした。ご主人様」

「う、うん。よかったね」


 今更冷静になっても遅いよね。

 とは言わないでおく。


 食後のお茶を飲みながら今後のことを話し合った。


「まずは宿屋に手荷物を置いて、シルヴァーナの服を買いに行こう」

「ご主人様、私のような奴隷に最初から厚遇して頂くのは……」


 尻尾、尻尾。

 


 東通りのほうに工房付きの店が並んでいるので、そちらに行って服を買ってしまおう。


 布製品を主に取り扱う店で、まずは俺とシルヴァーナの下着と靴下を買った。


 下は男女兼用で、腰に紐がついているトランクスのようなものだ。

 色気も何もないな。


 上はスポーツブラのような品があったので、シルヴァーナ自身に店員さんと相談しながら買ってもらう。

 迷宮で激しい運動をするのだから、将来の為にもブラジャーは必須だろう。


 次は服を選ぶ。

 俺のほうは焦茶色と深い藍染めのボトム2本、白と生成りのシャツを2枚買い、体に合わせて調整してもらう。

 ついでに以前買ったシャツとボトムを使って袋を何枚か作ってもらった。


 シルヴァーナの服は少し迷った。


 シルヴァーナの髪は、名前の通り少し光沢がかった銀色だ。

 頭の上にちょこんと飛び出ている三角耳は、内側が白銀、外側が僅かに青み掛かっている。

 尻尾は上半分が青、下半分が白銀でかなり太い。

 目鼻立ちははっきりしていて、瞳の色は薄茶色。


 二人で散々迷った挙句、白と藍色の手首まであるチュニック2枚を選んで膝丈に直してもらった。

 迷宮へ行くときにチュニックの下に穿くように、生成りと褐色のボトムを買った。

 チュニックは袖口を紐で縛れるようにして貰った。


 まとめ買いしたせいか、銀貨7枚のところを銀貨6枚にサービスして貰えた。

 約6万か。

 どれも体にぴったり合うし、生地も柔らかい綿だ。

 色合いも良い。

 さりげない刺繍も気に入った。


 あ、忘れるところだった。

 シルヴァーナの尻尾用の加工も頼んでおく。


 サイズ調整が終わったら宿に届けてもらうように頼んだ。

 買い物中に荷物を増やしたくないしね。



 次にブーツを買いに革製品の店に行く。

 考えてみれば、俺のブーツはこの1か月履きっぱなしだ。

 シルヴァーナだってサンダルじゃ戦えない。


 まずは足の型を取ってもらう。

 足の形に完璧に合う半長靴を作ってもらおう。

 要所を金属で補強してもらい、防水加工もお願いした。


 忘れずにシルヴァーナ用の当面のブーツと、俺の分のサンダルも買った。

 シルヴァーナが履いているのを見て欲しくなったんだ。


 風呂上りにブーツを履いて宿に帰るのは、ちょっと嫌だったから丁度いい。

 底がコルク材で柔らかいサンダルを選んだ。


 全部合わせて銀貨6枚だった。


 靴と服とで約12万か。


「ご主人様、物が良すぎる気がしますが」

「大丈夫だ」


 金貨30枚をなめるなよ。


 武器と防具も買いたかったが、残念ながらここで時間切れだ。

 さすがに一々サイズを計って吟味しながら買うと時間がかかる。


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