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女神

「もし、もし」


うーん


「もし、目が覚めましたか」


今度はどこだ?真っ白な霧の中、目の前には尋常じゃない黒髪美女が立っていた。


「初めまして。私はアイリスと申します。イズマイールの女神をしておりますわ」

「あ、これはご丁寧に。長谷部明人です。イズマイール?に行くことになったのですが」

「主より伺っております。こちらへお越しください」


女神についていくと、質素なログハウスに案内された。


「こちらで1週間後の旅立ちに向けて準備して頂きます。まずは私のほうから説明させて頂きますわ」


そういえば感激しすぎて何も聞かずにきちゃったな。まぁ、ここで色々聞こう。


「イズマイールはマナの豊かな生命溢れる世界です。元々、人々は主によって守られ、初歩的な生活魔法と魔石を使って穏やかに暮らしておりました。私は二千年ほど前に生を受けた元人間です」


元人間の女神様か。死後神格化されたのかな。


「えっと、魔石というのは初めて聞きました。剣と魔法の世界だとは聞いていたのですが」

「そうですね、分かりやすく例えれば、魔法とは科学、魔石はある種の資源と言っていいかと思います。あとは実際に体験されるほうが良いと思いますわ」

「なるほど、失礼しました。どうぞお話を続けてください」

「それでは・・・。私は生前、信仰していた主より魔法の力を授かり、その力で人々を導くと同時に、魔法の知識を広めておりました。人々がより安穏な生活を送れるようにと。私は25歳の時、その功績をもって神界に上り、この世界を見守ってきたのです」

「なるほど。その後、何か問題が?」

「ええ。その後、人々は魔法の力で発展し、同時に争いも激化しました。現在は戦争も落ち着きましたが、私の生前のような思いやりに満ちた社会とは言えません」


 あぶねー。戦争で荒廃した世界じゃなくてよっかったー。


「ふふふ、しかし明人さんの過ごした地球と比べてはいけませんよ。比べものにならないほど命の価値が軽んじられていますから」

「肝に銘じます」

「いいでしょう。さて、争いのあと、イズマイールの人々の心には大きな変化が訪れました。それを私は問題視しております」

「といいますと?」

「信仰です」


そう言うとアイリスさんは悲しげな顔をして語った。


「私は主への信仰の結果、魔法を与えられました。しかし現在、人々は魔法のためだけに形だけ主を信仰しております」

「なるほど・・・言葉は悪いですが、魔法で信仰を買った、という状況になってしまっているのですね」

「その通りですわ。原因と結果が逆になってしまったのです。もちろん、偽りの信仰によって魔法の力は弱まりました。しかし、魔法の知識は信仰と切り離され、人々の間に伝播してしまっています。私の時代にはなかった攻撃的な魔法が一般的になりました。そして、そのような魔法を前提に社会が構築されている以上、魔法の力を取り上げるわけにもいきません」


なるほどねぇ。魔法がなくなったら社会は大混乱ってわけだ。こんな優しそうな女神なら、絶対に避けたい事態だろう。


「主への愛から切り離された魔法の力は、容易に人を傷つけます。私はもう一度、自由な主への愛を取り戻すために地上に降りることにしました。アキトさんは、私の降臨に先立って事前調査をしていただきたいのです」


アイリスさん・・・めっちゃ輝いてるよ。女神って興奮すると光るんだな・・・って、ちょっとまて。


「ちょ、ちょっとまってください。アイリスさんのお話は、まるで現代での救世主の復活です。容易ならざる事業です。事前調査とはいえ僕ではお手伝いできそうにありません。それに、主より自由に生きよと言われています」

「ふふふ、もちろん、私の話とは無関係に、自由に動いていただいて結構ですよ。私は観察し、愛を取り戻すための計画の参考にするだけですわ。それに、私が地上に降りるのはアキトさんが死亡した後になります。」


愛を取り戻せってか。指先ひとつでダウンしそうだ。


「それでは、何か質問はありませんか」


質問、質問かー。


「あ、えっと、剣と魔法の世界ってことは魔物とかもいるんでしょうか」

「ええ、もちろんです」


くはー


「えーっと、主が身分もくれるって言ってたんですが、どういうことでしょう」

「身分もないと流民か奴隷になってしまいます。遥か東方の国の没落した貴族の子孫という身分になって頂きます。その貴族の関係者は既に死亡していますので、ばれる心配はありません」


流民か奴隷って・・・シビアだな。


「変な病原菌などは大丈夫でしょうか」

「はい。その点は身体能力の強化に含まれております。病気どころか、毒も効きませんし、寿命も300年ほどあります。肉体のピークを迎えてからは老化もしません」


うおおおおおい! すっげーな、おい。


「ふふふ、このくらいでなければ、私の事前調査になりませんわ」


そりゃそうかもしれないな。下手したらアイリスさんはこの先100年200年と教えを説き続けるかもしれないんだ。毒も盛られるだろうし、暗殺の危険だってあるだろう。







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