シルヴァーナ
最近は定期的にディアナさんのところに行っている。
初回にあれだけのことを体験すれば、恥ずかしいことなんてなくなってしまう。
それに極上のオイルマッサージが癖になってしまったようだ。
テクニックが凄まじい。
けっしてエロい意味ではない。
けっしてエロい意味ではない。
お蔭で肌がツヤツヤである。
はぁ~、ディアナさんを独占したい。
自宅にでかい浴室を作ってディアナさんに傅かれたい。
いかん、正直になりすぎた。
「ところでディアナさん、俺、今度奴隷を買うんですが、お風呂ってどうしたらいいですかね?」
「あら、アキト様、おめでとうございます。ご立派ですわ」
ちなみに、市民は奴隷を従えて初めて一人前と言われている。
「そうでございますね、公然の秘密と申してよいかもしれませんが、公衆浴場は閉館した後、働いている奴隷達が利用しているのです。その時間になると付近の奴隷達も密かに招き入れておりますわ」
お、意外と楽に問題解決だな。
でも、それだとしっぽりと混浴というのは無理だな。
「それって……俺もその時間に入れますかね?」
ダメ元で聞いてみる。
「まぁ、アキト様ったら。浴場の女奴隷達が騒ぎ出しますわ」
当たり前だが、ガタカという手法は女奴隷達に相当に嫌悪されている。
魔法使いなのにガタカに協力せず、更には未然に防いだということで、俺はなかなか奴隷達に人気があるらしい。
なんにせよこれで問題が片付いた。
「じゃ、女将さん、行ってくるんで部屋の変更お願いします」
「あいよ。ダブルにしとくからね」
さすが女将さん。よく分かってらっしゃる。
今日はルドルフさんと約束した日だ。
まずは探索者ギルドから金貨35枚を引き出す。
盗まれないようにアイテムボックスに放り込んで、ルドルフさんの商館に向かった。
「アキト様ようこそおいで下さいました」
2階の応接室に通されるとすぐにルドルフさんがやって来た。
「先日はギヨームめを捕えていただき、本当にありがとうございました。ガタカに手を出すなど奴隷商の恥晒しでございます」
そう言うと、
「アキト様、このルドルフ、益々感服致しましたぞ。魔法使い様なら協力してもおかしくないところ、逆に奴めらを成敗なさるとは」
「いえ、個人的にもガタカは許されないと思いましたから」
無理やりはよくない。
「さすが奴隷への愛を分かってらっしゃる。ささ、この1か月の私共の成果をご覧ください」
とルドルフさんが言うと、前回見た戦争奴隷達があらわれた。
皆怪我も完治している。
ガリガリに痩せていたのも多少回復して健康そうだ。
「さ、みんな、アキト様にご挨拶を」
すると端から貫頭衣を脱いで裸になり、自己紹介を始めた。
「銀狼族のシルヴァーナと申します。北の山脈出身です。歳は17になります。力には自信がございます」
一通り自己紹介が終わると、みな部屋を出て行った。
「さ、アキト様。いかがでしたでしょうか」
「さすがルドルフさんです。みな健康で素直そうでした」
「気に入った娘はおりましたでしょうか」
これは最初から決めている。
「それではシルヴァーナを」
そういうとルドルフさんは頷いて
「さすが、お目が高い。狼族はチームプレイに優れ、集団内の序列もしっかりと守ります。また、シルヴァーナは力も強く、将来よい戦士となるでしょう」
と太鼓判を押してくれた。
「アキト様のお蔭で彼女たちの教育もはかどりました。ギヨームめを懲らしめて頂いた御恩もあります。シルヴァーナは金貨5枚でいかがでしょうか」
安いな。
安すぎる。
金貨5枚を机に置いて気になっていたことを聞いてみた。
「彼女への給金なんですが、いかほどが適切でしょう?」
「探索者用のレベル1ですからな、衣食住さえ確保すれば給金を払う必要はないでしょう」
「レベルが上がっていけば給金も上がると?」
「そうですな、レベルが上がるにつれて給金も上げる必要があるでしょう。アキト様は給金を払い渋ることはございますまい。ただ、払いすぎてすぐにシルヴァーナが自身を買い戻してしまうことを御心配なさっているのでは?」
その通りだった。
シルヴァーナの値段は金貨5枚。
すぐにとはいかないだろうが、順調に成長すれば楽に返せるようになるだろう。
「アキト様、ご安心ください。奴隷が成長すれば給金は上がりますが、同時に奴隷自身の値段も上がります。苦労して育ててもすぐに自分を買い戻してしまう、ということはございません」
それに、とルドルフさんは繋げる。
「解放奴隷となっても以前の主人と縁が切れるわけではありません。以前の主人を庇護者として頼ります。また、解放奴隷となっても家臣として主人に仕えたり、愛妾となったりするケースもございます」
なるほどね。
「つまり、主人と奴隷との信頼関係が大事というわけですね」
ルドルフさんは大きく頷いた。
「アキト・ハセベという。主人として至らない点もあるかと思うが、これからよろしく頼む」
丁寧に頭を下げて挨拶しておいた。
例え相手がどんな立場であれ、女の子への最初の挨拶は丁寧にしておいたほうがいいだろう。
「シルヴァーナでございます。誠心誠意お仕えさせていただきます」
シルヴァーナも優雅に一礼する。
ルドルフさん流石だな。
「それではアキト様もシルヴァーナもクリスタルをお出しください」
クリスタルを出すと、所有奴隷としてシルヴァーナの名が刻まれた。
シルヴァーナのクリスタルには主人として俺の名が刻まれている。
やっと……やっとソロ脱出だ。