3階層
決めた。
スキルポイント目的で人を殺すことはしない。
明らかに殺人を奨励しているかのようなシステムだが、これに乗ったらシステム作成者の思うつぼだ。
決めたはいいのだが、戦闘スキルは魅力的だ。
HPUP、MPUP、気配遮断、見切り、俊足etc
どれも魅力的だが、150ポイントでは満足に欲しいスキルを取れない。
やはり、良いスキルは多くポイントを食うようだ。
ガイウスさんはスキルを2つも持っていた。
不撓不屈Lv2:HPが減るに従って防御力が上がる。
護り手Lv5(MAX):近くにいる味方を庇ったとき防御力アップ。
なんなの、あの人。
パーティー入ってくれませんかね。
残念ながら、ガイウスさん達は1週間ほどジルコに滞在したのち、帝都に帰って行った。
「帝都に来たら訪ねてこい。特務隊のガイウスと言えば分るはずだ」
「その際は是非神殿にもいらしてくださいね」
件の奴隷商の人員は全員ユリアさんに尋問され、ガタカに関与した者は帝都に連行されていった。
主犯格は磔刑になるそうだ。
奴隷の女達は全員無事だった。
幸い、ガタカは未遂で終わったらしい。
ギヨームは逮捕の上、財産没収。
奴隷はギヨームの財産なので国の管理下に入った。
久しぶりに迷宮に入った。
今回からは3階層に潜る。
三階層の敵はウォルナットホロウだ。
扉を開けると2Mくらいの木があらわれた。
木の幹に顔が浮かんでいる。
ということは、木のクセに前と後ろがあるようだ。
でも、木ってどうやって攻撃してくるんだろう。
慎重に間合いを取って観察してみると、いきなりクルミを飛ばしてきた。
「痛ぇ!」
クルミが額に当たってスコーンといい音がした。
ヤバイ、こいつ遠距離攻撃だ。
マナボルトでは効果が薄そうなので、マナストライクで圧し折ってやる。
「集え マナス……」
スコーン!
思わず額を押さえる。
なんとなくニタニタと笑われてる気がする。
……こいつ絶対倒す!
「マナボルト!」
スコーン。
「マナボルト!!」
スコーン。
「マナボルトォォォ!!!」
はぁはぁ……死闘だった。
マナストライクを撃とうとすると詠唱完了前にクルミで邪魔をされる。
結果、詠唱のないマナボルトとクルミの、壮絶な撃ちあいになった。
「集え」という僅かな詠唱でも、1対1の場面では致命的な隙になる。
こいつ、メルヘンな見た目のくせに魔法使いの天敵なんじゃなかろうか。
ドロップアイテムはクルミ。
ふざけんなっ!
くっそ、額ばっかり狙いやがって。
めちゃくちゃコントロールいいじゃねぇか。
盾……盾役さえいれば。
ソロの限界なんだろうか。
まて、落ち着け、クールになれ。
さっきの闘いは、棒立ちのまま魔法とクルミを撃ちあうという最悪なものだった。
なにか弱点があるはずだ。なにか弱点が。
炎属性の魔法か?
いや、盾役が居ない。
詠唱を止められるのが落ちだ。
木、木ってどんな性質だ?
木、樹木、顔のある木、遠距離攻撃、コントロールが良い……。
カツーン。カツーン。カツーン。
「らら~~らら~、ら~~~ららら~~~♪」
分かってしまえば美味しい敵だった。
顔のある木、ということは前と後ろがある。
クルミから額を守りながら後ろに回ってしまえば後は楽だった。
木のモンスターだからか、移動や方向転換は苦手のようだ。
足のような根っこを土中から引っ張り上げなくては動けない。
恐ろしいコントロールで飛ばしてくるクルミも、見えない方向には投げられない。
あとは方向転換にもたついている間に、後ろから斧を打ち込めばいい。
そう。斧だ。
ウォルナットホロウには斧が異常に効いた。
歌の上手いサブちゃんの顔も浮かぼうというものだ。
何発か斧を撃ちこむと、メキメキっと音を立ててウォルナットホロウが倒れ、光になっていった。
ドロップアイテムは魔石と……ウォルナット材?
地球なら高級品だな。
そのうちウォルナット製の机でも作ってやろう。