表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/48

ガタカ

 ベースレベル7、魔法使い、剣士、戦士、アコライトも全てレベル7になったので、2階層のボスに挑むことにした。

 1階層と違って死ぬ危険性があるので安全第一で行きたいが、2階層ではこれ以上レベルが上がらないので仕方がない。

 それに、今の俺にとって2階層の敵は弱すぎる。

 以前ゴブリン2匹と戦ったとき攻撃を受けたが、殆どダメージを受けなかった。


 一応、ギルドで2階層のボスを調べてきた。ゴブリンエリートだ。


 くそっ、情報があるなら最初から調べておけばよかった。


 ボス部屋に入る前にアクセルをかけ、ジョブを魔法使いと剣士に戻しておく。

 斧はゴブリン相手だと少々使いにくかった。



 扉を開けるとゴブリンエリートが出現した。

 身長は170cmくらいか。ナイフではなくグラディウスを持っている。


 すかさずマナボルトを放った。

 ここ数日悩みぬいた末に、まずはマナ系列のスキルを伸ばすことにした。

 他人より魔力が高い俺なら、わざわざ弱点属性を突かなくても十分な威力が期待できる。

 あとは属性魔法を1系統か2系統取れば、範囲攻撃やここぞという時の火力も得られるようになるだろう。

 

 マナボルトはLvを上げるにつれて誘導するようになった。

 もっとも、そこまで強い誘導性があるわけではないので、基本的に胴体を狙っていく。


 魔法でノックバックさせ、剣で振り払って部屋の角に追い詰め、止めを放った。


 「集え、マナストライク」


 砲丸のようなマナの塊がゴブリンエリートに直撃し、ドガンと音を立てた。

 壁に押し付けられて衝撃の逃げ場がないだろう。


 ゴブリンエリートの胴体が潰れ、そのまま光になっていった。


 うーん、かなり余裕があるな。

 明日からは3階層に向かおう。







「アキト様、お待ちしておりました」


 宿に帰るとマチルダさんが待っていた。


「早急にお知らせしなければならないことがありまして……」


 マチルダさんに連れられてギルドの奥の部屋に行くと、


「アキト様はガタカという手法をご存知でしょうか?」


 いや、初耳だな。


「魔法使いの奴隷は人気があります。奴隷商館に1人いれば目玉商品となるでしょう」


 それがどうした。


「しかし、魔法使いになれるのは貴族の血筋のみとされています。貴族の方々は自らの血筋を女神に連なる血、ブルーブラッドと呼んで誇ってらっしゃいますし、皇帝は神の子とされています」


 ああ、よくあるよくあるw


「貴族が奴隷を孕ませた場合、その子は捨て子となって孤児院に引き取られることがあります。いちいち育ててなどいられませんし、法的には奴隷の子は奴隷とはいえ家庭内での扱いに困りますから。そこが魔法使い奴隷の仕入れ先となっているのです。もちろん母親が子を産む前に解放奴隷となり、子供は庶子として育てられることが大半ですが。」


 何とも……、正直すぎるというか世も末というか。


「とはいっても、貴族の子供でも魔法使いになれる確率は低いですし、そもそも本当に貴族の種かどうかは確認できません。宝くじを買うようなものです」

「そ、それで、それが私に何か関係が?」

「はい。そこで一部の奴隷商が考え出したのがガタカという手法です。その内容は、魔法使いの方に未妊娠の奴隷を抱いてもらおうというものです」



 想像以上に世も末だった。

 

 地球にも精子バンクがある。

 俺の留学していた大学の近くにも支店があった。

 精子を提供すると報酬がもらえた。

 俺はやっていないが。


 そこでは、理想的な精子提供者の条件として、知的で、身長180センチ以上、運動神経が良く、SAT(大学進学適正試験)でスコアが1400以上、茶色の目、金髪、エクボがあることとされていた。


 理由は単純でこれが顧客が望んでいる特徴だからだ。


「「もし顧客のみなさまが高校中退者の精子をのぞむのであれば、高校中退者の精子を提供します」」


 とか言って、そこの経営者が顰蹙を買っていたっけ。


 少なくとも地球の場合は、母親に望まれている。暖かな家庭を得ることも可能だ。

 母親の同意があればいいのか、そもそも金で買うことが許されるものなのか、という問題はあるけれど。

 

 ガタカの場合はもっとひどい。

 母は奴隷として強制され、子も奴隷となる。

 人を人として扱っていない。


「許せませんね。あってはならない手法です」

「もちろんです、アキト様。私も個人的に許せません。それに帝国法上も重罪となります」


 貴い血筋を乱すという理由でですが……、とマチルダさんは呟いた。


「そこで本題ですが、本日、ジルコにガタカを行おうとする奴隷商がいることが発覚しました。既に帝都から法務官と神祇官、特務隊が出発しており、夜半には到着予定です。アキト様はこれに合流し、一味捕縛に協力して頂きたいのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ