準備
次の日、迷宮に行って、魔法と斧で交互にスライムを倒していった。
その結果、休憩時間が少なくなり効率が大幅にアップした。
片手用の片刃の斧とはいえ、重心が先のほうにあるから、しっかりと遠心力をつけなければならない。
そのためには大きく振る必要があり、大きく振るためには体重移動や体の回転が必要になる。
また、刃の当たる角度も重要だと気が付いた。
対象に垂直に斧を振らないと、当たった時に斧の軌道がぐにゃぐにゃになってしまう。
危うく手首を痛めるところだった。
身体能力は高くなっているはずだが、武器を振るなら手首と握力の強化は必須だな。
夢中で練習していたら、昼過ぎには魔法使いと戦士がLv6になった。ベースレベルも6になっている。
キリがいいので切り上げると、銀貨3枚分も稼いでいた。
午後からはギルドの資料室で調べ物をすることにした。
調べたいことは魔法の種類と他の職についてだ。
結論から言うと、魔法については殆ど資料がなかった。
2000年の間に研究されつくしているかと思ったら甘かった。
分かったことは、マナボルトをLv5にすると、マナストライクという魔法を覚えられるということだけだ。
どうやら、魔法使いになれるのは貴族の血筋が多いらしく、貴族は殆どLvを上げないので、高Lvの魔法については知られていないらしい。
考えてみれば、仮に高Lv魔法知識があったとしても、その種類や取得条件なんて、モロに国防上の秘密なはずだ。
他方、ジョブについてはクリスタルで確認が容易なため、基本的な情報は集まっている。
現在、俺がジョブ再設定で選べるのが、剣士、戦士、魔法使い、アコライトの4つ。
剣士はソードマスターか剣豪へ
戦士はナイトかバーサーカーへ
魔法使いはソーサラーかウィザードへ
アコライトがクレリックかフライアーへ
これらが基本的な職と上級職だ。
上級職へは基本職ジョブ50から転職可能となる。
ただ、ジョブに関しては名前だけ判明しているものも多く、やはり詳細は不明なようだ。
うーん、分かったような分からんような。
探索者としては上級職についていると1流の証となるようだ。
一旦宿に帰って、公衆浴場へ行った。
風呂上りに剣を一本買おうと思う。
明日から剣士とアコライトを育てるためだ。
南通り沿いの大きめの武器屋に入った。
壁に並べられた武器に厨二心をくすぐられますなぁ。
フレイルにウォーハンマーにメイスなんかもあるが、三分の二は大小さまざまな剣が並べられていた。
剣士向けの店っぽいな。
当たりだ。
あれ? 短杖代わりにメイスってだめなんだろうか。
元は同じだよな。
いかんいかん、先に剣だ。
「すいませーん。初心者用の剣を見せてもらえませんか」
と、声をかけると、
奥からふくよかな妙齢の女性が現れた。
「あら、新米の剣士さんだね。どうせ迷宮のスライム相手に練習するんだろう?」
頷くと、
「だったら両手で持てる剣がいいわ。片手だと慣れないうちは難しいわよ」
話が早い。
「練習用だったらここら辺がいいね。値段はどれでも銀貨10枚でいいわよ」
柄が長めの剣を見繕ってくれた。
剣を一本一本鑑定していくと、比較的大振りな一本が高品質だった。
身長190cmで力も強化されてるからか、このくらいのサイズが丁度良さそうだ。
これで剣も入手した。
今日の稼ぎが吹っ飛んだが、悪くない買い物だったんじゃないかと思う。