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公衆浴場

「なるほど、そうくるかー」


 スライムが4種4匹現れると同時に、後ろの扉が閉まった。

 ボス=強い個体と思い込んでいた。


 スライム達がもぞもぞと這い寄ってくる。

 しかし動きが致命的に遅い。


 十分引き付けて、右端のイエロースライムにマナボルトを放った。

 イエロースライムが消えたと同時に、空いたスペースを駆け抜けて部屋の反対側へ行く。


 引き付けて、今度は反対側のグリーンスライムを倒した。

 あとは部屋をぐるぐる回っていれば、スライムに捕まることはない。


 次はレッドスライムにマナボルトを放った。

 残りはブルースライムだけだ。


 と思ったら、ブルースライムが急に震えだし、ポヨンと音を立てて分裂した。

 ブルースライムが2体になる。


「おいおい、マジか。時間で分裂するのか」


 急いで増えたブルースライムを倒すと、また残りの1体が分裂する。


 これは困った。

 時間で分裂するわけじゃなさそうだ。

 しばらく部屋をぐるぐる回ってみても、これ以上増える様子がない。

 となると、残り個体数が1の時に分裂するのか?

 

 こういう時の定番は「同時に倒す」だろう。

 しかし俺は気高きソロ。

 範囲攻撃も持っていない。


 これは本当に困った。

 マナボルトを使うには、集中、掛け声、発射の段階を踏む必要がある。

 2発目を撃つ前にスライムが分裂するだろう。


 ここは賭けに出るしかない。

 俺の貞操を賭けた大博打だ。


 急いでスマッシュのLvを4に上げた。

 マナボルトの集中も事前に済ませておく。


「うおおおおおおお! スマッシュ!!」


 助走を乗せて全力で斧を叩きつける。

 すぐに反対側のスライムへ、振り返りざまマナボルトを叩きつけた。


「ハァハァハァ……。やった、やったぞ」


 死闘だった……。

 倒した時にはガッチリと触手に捕まっていた。

 体にはヒンヤリとしたスライムの感触だけが残っている。


 2匹のスライムは溶け合うように光に還っていった……。







 宿屋に帰るとまだ夕飯にはまだ間があるらしい。 


「あらー、お帰り、アキト君。どうだった?綺麗になった?」


 女将さん……。


「いや、幸か不幸か汚れたままです。このまま公衆浴場にいこうかと」

「あら、丁度いいわね。あなたー、アキト君と一緒にお風呂いってきなさいな」


 これは助かる!

 実は昨日から公衆浴場には恐怖感があったのだ。


「おう、兄ちゃん。アキトだっけか?一緒に風呂いくか」


 ガッ〇似の親父さんは、ガルドさんというらしい。


「うっす、お供します。あ、ガルドさんの飯、最高でした!」


 ガルドさんはガハハ、と豪快に笑うと


「そういやおめぇ、ソロだったよな。最後の4色スライムは倒したか?」


 ふむ……。これくらいなら誤魔化せるか。


「なんとか。後で話すんで、僕も色々聞いていいですか?」


 ガルドさんは、やるじゃねえかとつぶやきながら頷いた。




 公衆浴場につくと、やはり昨日と同じようにクリスタルで身分を確認される。

 昨日も気になっていたのだが、どうやら市民階級以上でないと利用できないようだ。


「ガルドさん、奴隷ってここの施設は入れないんですか?」

「あー、そうだな。主人と一緒になら入れるぜ。主人の持ち物って扱いだな。ただ、中に入れるだけで施設は利用できないぞ。中の施設では奴隷が一杯働いているからな。」


 なるほど……言われてみればその通りだ。

 奴隷に奴隷を奉仕させるわけにはいかないのだろう。

 シルヴァーナを買ったら風呂はどうしよう。


「さーって、まずは体を洗わなくちゃな。そのあとはサウナだ。行くぞアキト」


 話は変わるが、ここの公衆浴場はすごい。

 大小の風呂、サウナ、オイルマッサージに冷たいプール。

 他にもいろいろと設備がある。

 この施設の探検だけで1日潰せそうだ。


 ずんずんと進んでいくガルドさんを追って、俺もタオルで前を隠しながらついていく。


 ガルドさん……逞しすぎます♡


「おい、アキト! なに隠してんだ。立派なもんブラ下げてるくせによぉ」


 とうとうこの時が来たか。

 俺は覚悟を決めてゆっくりとタオルを取った。



「ところで俺のコイツを見てくれ。こいつをどう思う?」

「すごく……モジャモジャです」



 そう、ガルドさんも他の人たちも、みんなトゥルントゥルンなのだ。 

 お蔭で昨日は周りの男がチラチラチラチラとこっちの股間を見てきて、ハッテン場に来たのかとビビってしまった。

 まぁ……ハッテン場でもあるんですがね。


「真面目な話、俺もトゥルンしたほうがいいですかね?」


 何が真面目なのかわからないが、俺は真面目である。


「あー、そうだな。真面目な話、風呂には皆が入るからな」


 ガルドさんも真面目だった。

 でも目が泳いでるぞ。


 しょうがない。

 郷に入っては郷に従え。

 俺も男だ。覚悟を決めよう。


「ガルドさん、こういうのって……その……自分でトゥルンするんですか? 剃刀で自分で処理するのはちょっと怖くて……」

「ガッハッハ、なんだアキトてめぇ、そんなことで悩んでたのか。安心しろ、プロがいるからよ」

「プ……プロ?」

「おう、あっちにオイルマッサージ室があるだろ? その奥に行って聞いてみな。安心しろ。ここの奴隷は腕がいいぞ。だがその前に体を洗って綺麗にするのがマナーだぞ」


 奴隷とかマナーとか頭がおかしくなりそうだったが、とりあえず二人で洗い場に入った。


 早速、ゴツイ男が背中を流しにくる。

 前のほうは断って自分で洗うことにした。

 何が悲しくてゴツイ男に前を洗われなきゃならんのか。

 

 洗い終わると、ガルドさんが気を利かせて先にサウナ室にいってくれた。

 流石に現場をみられたくはない。


 オイルマッサージ室に行くと、薄い湯浴み着をつけたお姉さん達がいた。

 こっちは当然全裸である。


「あの……その……、分かりますよね?」


 キョドってしまった。


「さあ、旦那様。こちらへいらしてくださいませ」


 一際妖艶な浅黒いお姉さんに連れられて台へうつぶせに寝かされると、周りを薄いカーテンで囲われた。

 ヤバイ、このお姉さんタイプだ。薄着が肌に張り付いて大きなお乳が……。


「さあ、旦那様、リラックスしてくださいませ」


 というと、人肌に暖められたオイルが背中に垂らされた。

 じっくりとオイルを塗りこむようにマッサージされていく。

 いつの間にか二人のお姉さんが加わって、上半身、腰、足とじっくりとマッサージを受けた


 仰向けに寝なおすと、お姉さんがまた手で直接オイルを塗りこんでくる。

 え、うそ、そんなところまで。


「旦那様、しっかりとオイルを揉み込まないと剃りにくうございます」


 そういうとお姉さんは顔、髭、腋と上から順にやさしく剃っていった。

 

 お姉さんがとうとう下に手を伸ばした時、俺の瞳から涙が一筋こぼれた。


 正直、体は完全に反応している。

 反応しているのに下を見れば、あるべき茂みが無くなっている。


 それを見て俺はまた泣いた。


「さあ、旦那様、仕上げでございます。足を開いて持ち上げてくださいませ」

 





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