スライム
「マナボルト!」
目の前のスライムが黒色の矢に貫かれ、そのまま光となって空気中に霧散していった。
「これで20匹目っと」
魔石とドロップアイテムのスライムスターチを拾ってアイテムボックスに放り投げると、一度廊下に戻って 休憩することにした。
結論からいうと、ジルコの迷宮は楽勝だった。
今朝は日の出前に起きて食堂が開いてすぐに朝飯を食べ、迷宮に出発した。
30分ほど歩いて迷宮前に着くと、ナッツと全粒粉を焼き締めた焼菓子とお茶のお弁当セットが売っていた。
銅貨3枚なり。
迷宮の入り口にはギルドの受付と素材買取所、そして軍の詰所がある。
何日も迷宮に入っている人もいるので、受付は24時間開いているらしい。
受付でクリスタルをチェックされ、探索者ギルドに所属していることを確認してもらい、迷宮の入り口に向う。
ジルコの迷宮1Fの敵はスライムだそうだ。
ジルコの迷宮が初心者用といわれるのは、スライムの習性に理由がある。
スライムは人を捕縛すると、その装備をパンツ一枚に至るまですべて消化してしまうのだ。
その後、体の隅々まで綺麗にし、満足すると解放してくれるらしい。
毎日一人は泣きながら迷宮から出てくるらしい。
不思議なことに、最初から着替えを用意して、嬉々としてスライムに突撃する常連もいるとかいないとか。
受付のおじさんが、着替えを常時用意してあるから安心だと言っていた。
全く安心できない。
迷宮の入り口には大きな石碑があった。
タッチすると一瞬で迷宮の1階にワープしていた。
「さて、迷宮探索と洒落込みますか」
迷宮の中は意外と明るい。
曇り空の昼間くらいの明るさだ。
天井もかなり高く、長柄武器を振り回しても大丈夫そうだ。
目の前の廊下は左側にカーブしており、左側は壁、右側にはところどころ扉が配置されている。
折角のデュアルジョブを生かして、左手にロッド、右手に鉄の斧を握りしめ、早速一番目の扉を開ける。
すぐさま中のモンスターを確認、鑑定をしてみた。
イエロースライム
Lv1
これがモンスターか。
意外と大きく、体高が俺の腰くらいまである。
もぞもぞと近寄ってきて、体の一部を触手のように伸ばしてきた。
気持ちわるっ!
さっさとスライムから距離をとると、バスケットボール大のコアに向けてマナボルトを撃ちこんでみた。
あれ?一撃?
スライムが光の粒子となって消えた後には、500円玉くらいの魔石とスライムスターチが落ちていた。
スキルポイントが1増えている。
気を取り直して次の扉を開ける。
スライム発見。
マナボルト撃つ。
アイテム拾う。
ここからはもう作業となっていった。
時々、一部屋にスライムが2匹いたりしたが、スライムの移動速度があまりにも遅いので余裕を持って対処できる。
スライムはレッド、グリーン、ブルー、イエローの4種類がいたが、どれもマナボルト一発だったので気にならない。
マナボルトLv1の消費MPが10だったので、余裕をもって10発撃ったら廊下で休憩することにした。
ダンジョン内部はかなりマナが濃いらしく、ちょっと休憩すればどんどんMPが回復していく。
ここでお弁当を使うことにした。
進んでいくと、廊下が行き止まりになっていて、大き目な扉がついていた。
ボス部屋だ。
ここでMPを全快にしておこう。
さて、ここに来るまでにLv4に上がっている。魔法使いと戦士もLv4になっていた。
HPとMPが増えたのはいいのだが、ジョブスキルポイントが魔法使いと戦士でそれぞれ3余っているのが気になる。
現状、マナボルトはLv1で威力に不足はないし、スマッシュは使っていない。
そういえば女将さん達は元探索者だっていっていたな。
ジョブスキルについて色々教えてもらえるかもしれない。
このままにしておいたほうが良さそうだ。
MPも全快したしボスに挑んでみよう。
1階層の敵は全部マナボルト一撃だった。
全く太刀打ちできないということはあるまい。
いざとなれば受付のおじさんのお世話になろう。
改めて両手にロッドと斧を握りしめ、ボス部屋の扉を開いた。
「なるほど、そうくるかー」
広めの部屋に赤青黄緑の4体のスライムが現れた。