プロローグ
俺が悩み始めて1週間が過ぎようとしている。
起きてはモニターを出し、これから起きるであろう事態を想定しては悩み、寝る。
期限は今日まで。さて、どうしたものか・・・。
1週間前、俺は死んだ。死んだことに未練はないと思う。大学を出て大学院へ、更に海外の大学院へと留学中だったから、世間的にはエリートだったのだろう。
しかし、これから先、どう頑張っても人の役には立てそうにない未来に俺はうんざりしていた。
分業化が進みすぎたのか、権力が分散しすぎたのか、市場が悪いのか、エリートが多すぎるのか、何が悪いのか分からないが俺は現世に多いに不満を抱いていたのだ。
そこであっさりと交通事故だ。
両親も健在、資産もあるし、老後は弟か妹が面倒みてくれるだろう。
あーあ、次は革命前の大貴族に生まれ変わりたい。
没落が目の前にあっても気付かずに、優雅に、民に優しく暮らしてみせるのに・・・。
「その願いは叶えられないのう」
「ぬあっ!」
うおおおお、びっくりした。
って、あれ?ベッドに寝てたのか?死んだのは夢?
・・・いや、こんな部屋知らないな。
知らない天井だ・・・ってうるさいわ。
「ふぉっふぉっふぉ、お主等はみんなそのセリフを言うのう。なんぞ決まりでもあるのか」
お約束ってやつですね。しかし、声はすれども姿は見えず。どちら様でしょう?
「お主等のいう神・・・といっていいのかのう。実はお主に別の世界に行ってもらいたくての。いわゆる剣と魔法の世界じゃ」
すげぇ。お約束が連鎖した。となると次は。
「無論、言語理解と身体能力強化、それに身分と当座の金もつけるぞい」
おおお!
「更に今回はステータス閲覧能力と多少のサービスもするぞい」
「パーフェクト!」
思わず声に出してしまった。お約束の役満じゃないですか。
「満足してくれたかの。その能力を使って自由に生きてほしい。貴族になるもよし、冒険者になるもよし、普通に生活してもよしじゃ」
もうなんと言っていいかわからないな。
感謝、圧倒的感謝・・・!
「ふぉっふぉっふぉ。それでは後は担当の女神に聞いてくれい。楽しく生きるのじゃぞ」
「あ、あの。もう会えないかもしれません。お礼を言わせてください。本当にありがとうございました」
「ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ・・・・」
俺はそのままベッドに倒れこんだ。