恋は盲目
取り敢えず一通りアルバムの曲を聞いてみると、普通?というかアルバムともなれば取っ付き易い曲が2、3曲はあるもので少し安心した。
兎に角、アルバムの中から気に入った曲をひたすら聞いて、徐々に他の曲も制覇していくというスタイルを採用し、彩女さんにディルの曲を聞いてみたよ!というメールを送ってみた。
因みに彩女さんとは携帯番号も交換しているのだか、如何せん彩女さんの声が小さいのでボリュームMAXにしても聞き取れない事が多々ある事と、彩女さんから電話は恥ずかしいので大学で会って直接話すかメールがいいとの指摘があったので、もっぱらメールをしているのである。
これって嫌われてないよね?
電話されるのウザいからメールで…
ていう理由じゃないよね?
メール返信あるし、大学で話しもするし!
もしかして…やっぱり微妙だったりするのかな?
誰か教えて〜!?
一抹の不安はあるものの、ディルの話しをすると彩女さんの熱い反応が返ってくるので楽しい。
やっぱり俺もディル好きにならねばと決意を硬くした。
翌日いつも通りコミホにミッフィーを書いに行くと彩女さんが、これまたいつも通りにコミホで雑誌を読んでいた。
メールも楽しいけど、本人と直接話せるのはやっぱり幸せです。
「彩女さん、おはようございます。」
「おはようございます、瞬さん」
やっぱり声が小さいです。とても聞き取り難いですがテンション上がりますね。
さっそく買ったアルバムの中から気に入った曲の話しをすると彩女さんが色々と話してくれますが、所詮にわか仕込みの俺には話しについていくのがやっとです。
「ディルが気に入ったならファンCLUB入るといいですよ。ライブチケットが入手しやすいですし、会報にはメンバーの事も書かれていますし、ここでしか手に入らない情報や買えなかったライブグッズ、またシークレットライブの案内もあったり本当にいいですよ」
今日の彩女さんはいつになくチョット積極的です。普段の会話は、おとなしい感じなのですが、やっぱりディルの事となると彩女さんでもテンションが上がるみたいです。そんな彩女さんを見れた今日は朝から良い一日になりそうです。
「本当ですか!どうやって入会したらいいんですか?」
「入ります?もし入るなら明日入会届け持ってきましょうか?瞬さんにあげますよ」
「え!?貰っちゃって大丈夫なんですか?」
「いいですよ。明日持ってきますので、この時間にコミホで」
やった〜!最高に嬉しいです。
たかが入会届け、されど入会届けです。ディル最高です!
しかし、男という生き物は単純ですよね。チョット前まで、ビジュアル系バンドを毛嫌いしていた人間が、あっという間にそのビジュアル系バンドのファンCLUBに入ろうとしているのだから…
恋のパワー恐るべしです。
彩女さんと別れて講義室に向かうと、ニヤニヤした3人が…
多分コミホにいた俺と彩女さんを目撃したのだろう。そんな分かりやすい顔で出迎えなくても報告するって!と思いながら3人と合流した。
「瞬〜朝から楽しそうやな!顔がニヤついてるで!エロいな〜」
「エロくはないと思うけど、ニヤついてるのは否定できないね。朝から彩女さんと話して…というか声が聞けた!という事実がデカイ。声小さいんだけどディルの話しになると少し声が大きくなるんだよ。うん、やっぱり彩女さんは可愛いよ!しかも明日ディルのファンCLUBの入会届け持ってきてくれるなんて言われたら最高の気分になるしかないでしょ!?」
「おお…そうか…良かったな…」
どうやら山さんとしては、朝っぱらから幸せオーラ全開の俺の反応をみて楽しもうとしたら、予想以上に俺の脳内がピンク色だった為に少々引き気味だった。
「てか瞬、お前ビジュアル系苦手じゃなかったか?」
「ん〜昨日アルバム聞いて、気に入ったのをエンドレスで流してるうちにかなり好きになってきた。恋の力は偉大だね二郎ちゃん!」
「元々壊れてた瞬が、さらに壊れたか…でも上手くいってるみたいで良かったな」
二郎ちゃんは口は悪いが、男気溢れる性格をしているので正直男の俺から見てもかっこいいと思うところが多い。
ただ男気が溢れ過ぎてて、少々ケンカっ早くてキレやすいのが玉にキズだ。でも、そんな事本人の前で言ったら100%殴られるだろうけど…
空手で乱取りを専門にやっていただけあり、やたらと戦闘能力が高いので気を付けないと危ない。殴られるとマジで痛い。
突きが内臓を突き抜ける感じの、一点集中の破壊力をもった突きを繰り出してくるのでケンカ慣れしてる俺も二郎ちゃんから一発もらった時は脳内に危険警報が鳴り響いたのをよく覚えている。キレると非常に危険な存在に早替わりするので普段から言葉には注意を払っているつもりだ。
「瞬、彩女さんが好きなのてディルでバンドだったよな?」
「そうだよ、村井さんも興味あるの?何だったらCD貸そか?村井さんもビジュアル系のバンド好きだっんだよね?前ライブに行ってた言ってたし」
「そこでだ瞬!俺は今後絶対に瞬が欲しがるであろう、絶対に必要になるであろう物を持っているんだけど、どうしても瞬が欲しい。ゆずって欲しいて言うんなら考えなくもない、かなりレアな物を持っているんだけど話しを聞くか?」
「ずいぶんと勿体付けた言い方するね〜ディル関連のグッズか何かでしょ?何なん?教えてよ!」
商い上手の村井さんが俺にディル関連の何かを売りつける算段を付けた様だった。
一体何を俺に売ろうとしているのか、この時点でかなり俺は興味をそそられた。
あとは話しを聞いて、村井さんから安く買い叩けるかどうかの俺と村井さんとの攻防が始まった。