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Love W  作者: みねお涼
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第2話

少女漫画のノリで書いてます

「ごめん!ユキちゃん!」

深夜に目覚めたトールはとりあえず帰宅した。

学校で再び対面すると、彼は両手を合わせてユキに謝った。

教室の一角。ユキは自分の席に座って笑っていた。

「いいよー。でもお母さんに見つからなくてよかった」

「ほんっとーにごめん!ケイ(あいつ)何かした?」

腰を曲げた姿勢のまま、不安げに顔を上げる。

「大丈夫だよ。すぐ寝ちゃったし」

ケイでいる間の記憶は、トールには無いらしい。

トールの質問にユキは、昨日の「キスしてよ」の発言を思い出す。

(トールもちょっとくらいしてくれていいんだけどなぁ)

そんなことを思いながら。


昼休み。

「もう一個くらい買ってもよかったかなー?」

ツバサは、上機嫌で1階の渡り廊下を歩いていた。手にはパックの紅茶と、いくつものパンを抱えている。

まだ3時間目の休み時間。この時間、購買部で買い物することは禁止されている。

ツバサは教師に見つからない様に、人通りの少ない裏手の廊下を歩いていた。


ふと、裏門のほうに人影を見つけた。

(あれ…?井出君、と…?)

それは、友人ユキの彼氏として認識している男子生徒、井出トールだ。

「すみません」

「いや、いいんだけどさ、たまには診せにきてよ」

そして、もう一人。

鉄製の黒い門に背をもたげて話す背の高い男性。

トールは、門に手をかけ俯いていた。

「じゃ、明日、祝日。絶対来い?」

「………」

なにも言わないトールを一瞥して、去っていく男性。

その男をツバサは知らない。

裏門でひっそり会わなければならないほど、やましい関係なのか。

聞こえてきた短い会話からは、何の手がかりも見つけられなかった。

ツバサは、遠くで「?」を飛ばすしかなかった。



放課後の教室。

「ねぇユキちゃん、明日デートしよう?」

「え?何どうしたの。珍しい」

いきなりの申し出に、きょとんとなるユキに、トールは

「…だめ?」

上目遣いに、子供のようにしゅんとした。

そんなトールに、ユキはきゅんとなってしまう。

我ながら、ばかだなと思ってしまうが、そんな彼の仕草が愛しい。

「ううん。だめじゃないよー。うれしい!」

大体、トールの方から誘ってくること自体珍しいのだ。

ユキに、断わる理由は無かった。




久しぶりのデートに、二人は近くのアミューズメントパークを選んだ。

入場料さえ払えば、中の乗り物は乗りたい放題。

思いっきり楽しむには、ここが一番だと思えた。

そんな2人を、何人かの男達がひそかにつけ回している事に、当の本人たちは気づいていない。

園内に設けられたゲームセンターで、UFOキャッチャーに打ち込む二人に、彼らは近づいた。

「おい!」

声をかけられると同時に、トールは肩をつかまれた。

強引に振りかえらされ、いきなり腹を蹴り上げられる。

「きゃあぁ!」

「この前はお世話になっちゃって?どーも」

トールは苦しそうに顔をしかめて、ケホケホと息を吐く。

別の男に足で再び蹴りこまれて、地面にうずくまる。

意識を失いそうになるが、トールは頭を振って自分を保とうとした。

「っ、この前の勢いはどうしたぁ?」

「きれいな彼女連れちゃってさ。もったいねぇよオマエには!」

絡んできた男達は、皆ユキ達と同年代のようだ。

男達は、ユキに手をかけた。

「やだっ、放してよ!」

トールがこんな乱暴な男達と知り合いなワケは無い。

ユキは、すぐにケイが関係していると分かった。

トールがいくら男で意地があっても、彼らには敵いっこない。

「トール!ケイを…!ケイを出して!」

ユキはケイに助けを求めた。

(トールが怪我しちゃう!)


その声に、トールは一瞬静止した。


ふらりと一瞬上体が揺れたかと思うと、相手に殴りかかる。

ねじりこむ様に繰出された一発。殴られたほうの男は気絶していた。

睨みつけたトールの目に、何かそれまでと異なる脅威を感じる。

それを見た残りの男たちは、怯んで逃げていった。

「ケイ!」

「……」

安心しきったユキの態度に、呼びかけられた方は何も答えない。

「…ケイ?」

不安になってケイの顔を覗き込もうと、そっと腕に手を伸ばす。

「ユキちゃん。しばらく僕に近づかないで…」

ケイのの腕に振れる前に、ユキの手がびくりと震えた。

「まさか、トール?…なんで―――!?」

ケイだとばかり思っていたユキは、衝撃を隠せなかった。


それが、裏切りだったとはしばらく気付かなかったほどに。


「ごめん、僕、先に帰るね」

ユキは、また彼の後姿を見つめることしか出来なかった。


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