代償 ~気軽に押してしまっただけなのに~
※注意‼︎
短編ホラーです。
夏も終盤に差しかかり、ヒグラシが鳴く頃合い。
珍しく商店街に来た私は、福引き券がちょうど貯まったので、引いてみることにした。
ガラガラと音を立て、抽選機を回した。
コロンと出てきたのは透明に光り輝くボールだった。
その瞬間、私の体は音を立てて変わり始めた。
メキメキメキメキッ。
体の細胞という細胞が、音を立てて生まれ変わるような心地がした。
最初、私はその事態の意味がわからなかった。
福引きをやっているおじさんは、ポケットの中からスマートフォンを差し出し、笑みを浮かべ柔らかい声で告げた。
「おめでとう、これで君も運営側だ」
画面を覗き込むと、そこには商店街を上空から見下ろす映像と、周りの人たちの頭には2桁の数字が表示されていた。そして、透明になった私の頭の上には、白く輝く「∞」のマークがあった。
「ターゲットを選択してください」
突然の音声に戸惑いながらも、画面の指示に従い、私は画面に表示されたパン屋の店主をポチっと押した。
その瞬間、パン屋の店主が砂に変わり、地面に崩れ落ちた。指先一つで世界の理を書き換えられることに、私は恐怖を通り越して若干の高揚感を覚えた。
ドク、ドクとうるさいほどに鼓動が響く。それは手の平のスマートフォンと完全に同期していた。
ふと見上げると、街灯が真っ赤に点滅し、住人たちが一斉に動きを止め、操り人形のようにゆっくりとこちらを向き、口を開いた。
「「「ポチっとしたね?ポチっとしたね?ポチっとしたね?ポチっとしたね?ポチっとしたね?ポチっとしたね?ポチっとしたね?ポチっとしたね?ポチっとしたね?ポチっとしたね?ポチっとしたね?……」」」
機械的な合唱が響き渡る。私は怯み、真っ先に逃げ出した。
逃げ込んだ袋小路で画面を連打したが、液晶からは「ポチっとしたね?」という文字と黒い泥のような液体が溢れ出した。
そこへ、先ほどのおじさんが現れた。
「よくもまぁ、渡した直後にやったね。だが、その気質が向いている」
おじさんは邪悪な笑みを浮かべ、私に渡したスマートフォンを取り上げ、新しいものを差し出した。しかし、その画面に並んでいたのは私の身内の人間ばかりだった。
私は怖くなり、夜の闇へと駆け出した。
おじさんの高笑いが妙に耳に残った。
ーーーー
ようやく辿り着いた自宅。しかし自分の持っている鍵では玄関が開かなかった。
リビングの窓を覗くと、そこには自分と同じ「∞」のマークを頭上に浮かべ、家族と楽しそうに夕飯を囲む「もう一人の自分」がいた。
「ただいま」と声をかけても、家族の返事はなかった。
窓の中の「偽物の私」がこちらを向き、口角を吊り上げて、こう口が動いていた。
「おかえり」
少しホラーを自分で書く分には楽しい(まじのは怖いから読まない書かない関わらない)。
恐ろしい、怖いと思った方や興味深いと思った方はぜひ下から★★★★★をつけてください!
【簡単な宣伝(''◇'')ゞ】
ジャンルは全然違いますが、別作品も読んでいただけると幸いです。
『どこまでもモブだけど主人公になりたい佐藤くんがかっこいいことを私だけが知っている』
あらすじ
隠れオタクライフを満喫したい女子高生の「私」が、自称・主人公の彼を特等席で楽しむ物語。
青春×学園×変人奇人
https://ncode.syosetu.com/n2195mh/
筆者からのひとこと
実はこの作品、インターネットのメタファーを入れてたのに気づきました?(意識しながら描いた程度なのでそんなはっきりと象徴させたわけではないです)
なろうに投稿している私が言うのもアレですが、夏は特に気をつけてくださいね、色々と。




