第99話 城壁防衛線
ズドン。
ズドン。
山を降りてくる石の巨兵。
一歩踏み出すだけで地面が震える。
高さはおよそ100メートル。
岩の巨体。
山そのもののような存在だった。
ブロックンの城壁。
警鐘が鳴り続けている。
カン!!
カン!!
兵士が叫ぶ。
「総員配置につけ!」
「バリストン準備!」
城壁の上に並ぶ巨大兵器。
それは普通のバリスタではない。
対人兵器などでは到底ない。
巨大弩砲。
名を――
バリストン。
城壁に固定された攻城兵器。
鋼鉄と巨大木材で組まれた機構。
弓腕の長さは人の背丈の数倍。
矢は槍ではない。
丸太ほどの太さ。
長さは5メートル以上。
城壁を攻める怪物や巨獣を想定して作られた――
都市防衛兵器。
兵士が怒鳴る。
「距離700!」
「照準合わせろ!」
巨大な滑車が回る。
ギギギギ……
弦が引かれていく。
十人がかりで張る弓。
兵士が腕を振り下ろした。
「撃てぇ!!」
ドォン!!
巨大矢が放たれる。
空気を裂く轟音。
次々と発射される。
ドォン!!
ドォン!!
ドォン!!
石の巨兵へ。
直撃。
ガァァン!!
石が砕ける。
胸部の岩が割れる。
兵士が叫ぶ。
「命中!」
しかし。
巨兵は止まらない。
ズドン。
ズドン。
歩く。
まるで意に介していない。
リーナが呟く。
「効いてるけど……」
ミカサが言う。
「止まっとらんな」
勇士が叫ぶ。
「足を狙え!」
ルークも剣を構える。
風が集まる。
「行く」
風の刃。
ドン!!
巨兵の脚を削る。
石が砕ける。
リーナが弓を引く。
風魔法を纏う矢。
ヒュン!!
関節へ。
ガキン!!
石が割れる。
勇士たちが突撃する。
「今だ!」
斧。
槍。
剣。
脚部へ集中攻撃。
だが。
巨兵の腕が振り上がる。
次の瞬間。
ドォォォン!!
拳が振り下ろされた。
地面が爆発する。
勇士が吹き飛ぶ。
瓦礫が飛び散る。
その破片が――
リーナに当たった。
「っ!」
リーナが膝をつく。
ルークが叫ぶ。
「リーナ!」
駆け寄る。
肩から血が流れていた。
リーナが苦笑する。
「ちょっと油断した」
ルークは手をかざす。
淡い光。
癒し魔法。
傷が塞がっていく。
リーナの呼吸が落ち着く。
「……ありがとう」
だが。
ルークは首を振る。
「下がって」
リーナが睨む。
「嫌」
ルークは静かに言う。
「街が後ろにある」
「無理させられない」
リーナは悔しそうに拳を握る。
そして小さく頷いた。
「……わかった」
勇士が叫ぶ。
「後ろへ下がれ!」
その間にも。
巨兵は歩く。
ズドン。
ズドン。
城壁まで残り200メートル。
兵士が叫ぶ。
「バリストン再装填!」
滑車が回る。
巨大矢が再び装填される。
「撃てぇ!!」
ドォン!!
ドォン!!
ドォン!!
連続射撃。
石が砕ける。
だが。
巨兵は止まらない。
ズドン。
ズドン。
城壁まで。
あと――
100メートル。
ルークが呟く。
「……まずい」




