第88話 砂漠の英雄
ラシードの空は青かった。
砂の街。
白い建物。
熱い風。
だが――
街の空気は、以前と違っていた。
市場。
香辛料の匂い。
布の店。
人々の声。
その中心で。
ざわめきが広がる。
「竜騎士だ」
「砂海の主を倒した」
「地下の遺跡も見つけたらしい」
ルークは困った顔をしていた。
「なんか……見られてるね」
リーナがため息をつく。
「当たり前でしょ」
「もう完全に有名人よ」
ミカサが横で笑う。
「兄ちゃん」
「この辺じゃもう英雄や」
ルークは苦笑する。
「そういうの慣れないな」
市場の店主が声をかけてくる。
「英雄様!」
「これ食べていってくれ!」
別の店。
「うちの店も寄ってくれ!」
リーナが呟く。
「すごい人気」
ミカサが笑った。
「宣伝効果や」
「英雄効果」
ルーク
「商品みたいだね」
ミカサ
「商品やで」
リーナが言う。
「言い切った」
三人は市場を歩く。
やがて港が見える丘に出た。
砂漠の風が吹く。
ルークが言った。
「終わったね」
リーナが頷く。
「砂海の主」
「地下遺跡」
「災害の記録」
ミカサが腕を組む。
「せやな」
そして少し真面目な顔になる。
「でもな」
「これ」
遺跡の方向を見る。
「始まりかもしれん」
ルーク
「災害?」
ミカサ
「せや」
リーナが言う。
「四体いたね」
ルークは空を見上げた。
「もし全部本当にいるなら」
「世界規模だ」
静かな沈黙。
その時。
ミカサが言った。
「でも安心せえ」
二人を見る。
「兄ちゃんおる」
リーナが笑う。
「完全に頼ってる」
ミカサ
「当然や」
そして胸を張る。
「うちはな」
「英雄様の専属商人」
「マネージャーや」
ルーク
「いつ決まったの?」
ミカサ
「今」
リーナが笑う。
「勝手に決めた」
ミカサ
「商売はスピードや」
三人は笑った。
その時。
遠くの砂丘の向こう。
巨大な採掘塔が煙を上げている。
その地下には。
古代文明。
災害管理施設。
そして世界の秘密。
だがそれはまだ――
ほんの一部だった。
ルークは静かに言った。
「世界は広いね」
ミカサが笑う。
「せや」
リーナも言う。
「だから冒険がある」
砂漠の風が吹く。
英雄。
商人。
そして仲間。
三人の旅は
まだ始まったばかりだった。
そして。
遠い国では――
災害の記録を調べる
一人の男がいた。
その男は笑う。
「面白い」
「世界災害か」
「なら」
本を閉じる。
「俺も行くか」
まだ誰も知らない。
もう一人の存在。
それが
未来の世界を
大きく動かすことになる。
砂漠の物語は終わり、
新しい冒険が
静かに動き出していた。




