第86話 商人の目
地下遺跡の最奥。
古代文明の記録装置の前で、三人はまだ周囲を調べていた。
リーナが壁画を見上げる。
「これ全部」
「古代文明の記録なのかな」
ルークは装置を観察していた。
「たぶん」
「災害を監視してた施設だ」
ミカサは少し離れた場所を歩いていた。
壁。
床。
石柱。
じっと観察している。
リーナが声をかけた。
「ミカサ?」
ミカサは答えない。
床を軽く叩く。
コンコン。
音が違う。
さらに別の場所を叩く。
コンコン。
そして言った。
「兄ちゃん」
「これ掘れる?」
ルークが近づく。
「ここ?」
ミカサが頷く。
「せや」
「ちょっと削ってみて」
ルークはロングソードを軽く振るった。
石の床が少し砕ける。
その瞬間。
黒い液体がにじみ出た。
リーナが言う。
「……これ」
ミカサがにやりと笑った。
「石油や」
ルークが言う。
「採掘してるやつ?」
ミカサが頷く。
「せやけどな」
「質が違う」
指で少しすくう。
匂いを嗅ぐ。
そして言った。
「これ」
「めちゃくちゃ純度高い」
リーナが言う。
「そんなのわかるの?」
ミカサが笑う。
「当たり前や」
「ラシード拠点にしとった商人やで」
そして周囲を見渡す。
床。
壁。
地下構造。
ミカサの目が光る。
「……なるほどな」
ルークが聞く。
「何かわかった?」
ミカサが言う。
「この遺跡」
「災害管理施設やろ?」
ルーク
「うん」
ミカサは床を軽く叩きながら続けた。
「つまりな」
「古代文明は」
「ここに資源あるから施設作った」
リーナが驚く。
「え」
ミカサが言う。
「石油や」
「超重要資源」
そして笑った。
「つまり」
「ここ」
「めちゃくちゃ儲かる場所や」
リーナが呆れる。
「そこ?」
ミカサは真顔になった。
「国家的にも」
「さらに重要度が上がったってわけや」
ルークを見る。
「兄ちゃん」
「さっき王城で言うたやろ」
「英雄は利用される」
ルーク
「うん」
ミカサ
「でもな」
指を立てる。
「利用する側に回ればええ」
リーナが言う。
「……何考えてるの?」
ミカサが笑った。
「簡単や」
「ラシードにさらに交渉する」
ルーク
「再交渉?」
リーナ
「うん?」
ミカサが頷く。
「せや」
そしてニヤリと笑う。
「任せとき」
「この場所がどれだけ重要か」
「それと」
「どれだけ危険なこと国がしとったか」
「ちゃんとわからせたる」
ルークが聞く。
「なんでそこまでするの?」
ミカサは即答した。
「当たり前や」
そして真顔で言った。
「兄ちゃん」
「世界救う気あるんやろ?」
ルーク
「……うん」
ミカサ
「ほんなら」
「金いるで」
「さっきの兄ちゃんの話聞いてても一人や無理や言うてたし」
「災害に対しての備えはしとかなあかん。」
静寂。
リーナが少し笑う。
「確かに」
ルークも苦笑した。
ミカサは遺跡を見上げる。
古代文明。
災害。
資源。
すべてが繋がっていた。
そして言う。
「兄やん」
「これはな」
「ただの遺跡ちゃうねん」
「世界動かす場所やっちゅうことや」
砂漠の地下で見つかったもの。
それは
古代文明の秘密と
未来の資源だった。
そして――
商人ミカサは
すでに次の一手を考えていた。




