表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/116

第79話 商人ミカサ

夕暮れ。


ラシードの街は昼とは別の顔を見せていた。


赤い砂の風が少し弱まり、涼しい空気が流れ始める。


市場には灯りがともり、香辛料の匂いと焼いた肉の匂いが混ざっていた。


ミカサは屋台の椅子にどっかり座っていた。


「いやー」


「今日は儲かったなぁ」


机の上には金貨の袋。


役人との交渉の結果、怪物素材の買い取り額はかなりの額になっていた。


リーナが呆れた顔をする。


「あなた半分以上話してたわよね」


ミカサは笑った。


「商売はな」


「口が武器や」


「剣より強い時もあるで」


ルークが苦笑する。


「確かに」


リーナが言う。


「ルークが戦って」


「あなたが儲ける構図よね」


ミカサは平然と言った。


「持ちつ持たれつや」


そしてルークを見る。


「兄ちゃんは戦う」


「うちは稼ぐ」


「完璧な分業やろ?」


リーナが小声で呟く。


「ちゃっかりしてる……」


ミカサは笑った。


「褒め言葉やな」


料理が運ばれてくる。


香辛料の効いた肉料理。


ミカサが一口食べて満足そうに頷いた。


「うん」


「やっぱラシードの飯は美味い」


リーナが聞く。


「よく来るの?」


ミカサは頷く。


「しょっちゅうや」


「この街は商売の中心やからな」


少し間。


ミカサはグラスを揺らしながら言った。


「うちの親な」


「元奴隷やねん」


リーナが少し驚く。


ミカサは笑って続けた。


「まぁこの辺じゃ珍しくもない」


「砂漠の国やしな」


「うちの親父はな」


「死ぬほど働いて自由になった」


「ほんで小さい商売始めた」


ルークは静かに聞いていた。


ミカサは肩をすくめる。


「せやけど」


「奪われるんよ」


「力ないと」


「金ないと」


「立場ないと」


グラスを机に置く。


「だからうちは決めた」


少し笑う。


「全部手に入れるって」


リーナが言う。


「全部?」


ミカサは指を立てた。


「金」


「情報」


「交渉」


「この三つ」


そしてニヤッと笑う。


「この世の大半は動かせる」


ルークが言う。


「すごい考え方だね」


ミカサは肩をすくめた。


「現実や」


そして少しだけ真面目な顔になる。


「兄ちゃんはな」


「逆やろ?」


ルークが首をかしげる。


「逆?」


ミカサは笑った。


「金も名誉も興味なさそうや」


リーナが即答する。


「ないわね」


ルークは苦笑する。


「困ってる人がいれば助ける」


「それだけだよ」


ミカサは少し黙った。


そして言う。


「……ほんま」


「損な生き方やな」


だがその目は笑っていた。


「でも嫌いやない」


その時。


ミカサがふとルークを見る。


じっと観察するような視線。


ルークが気づく。


「どうしたの?」


ミカサは言った。


「兄ちゃん」


「顔ええな」


リーナが止まる。


ミカサは続ける。


「背も高い」


「強い」


「しかも天然」


ニヤッと笑う。


「モテるやろ?」


ルークが困る。


「いや……」


リーナが腕を組む。


「別に」


ミカサがニヤニヤする。


「怒っとる?」


「怒ってない」


即答。


ミカサは笑う。


「かわええなぁ」


リーナが睨む。


「何が?」


ミカサは楽しそうだった。


ルークは状況がよくわからない。


その様子を見てミカサが言う。


「兄ちゃん」


その様子を見てミカサが言う。


「兄ちゃん」


「ほんま面白い人やな」


ルークが首をかしげる。


「そう?」


ミカサは笑った。

「そう、教えといたるわ」


「普通の人はな」


「竜倒して金持ったら、もっと偉そうになる」


肩をすくめる。


「せやのに兄ちゃんは」


「相変わらず“困ってる人助けるだけ”やろ?」


リーナが小さく笑う。


「それがこの人だから」


ミカサは頷いた。


「せやろな」


グラスを持ち上げる。


「英雄さんって言うのはもっと近寄りがたいもんか思っとったけど」


にやっと笑う。


「案外、商売相手としては最高や」


リーナが言う。


「そこ結局そこなのね」


ミカサは即答した。


「当たり前や」


「商人やからな」


そしてグラスを持ち上げた。


「まぁええ」


「英雄と商人」


「この組み合わせ」


「悪くないで」


そして笑う。


「しばらく一緒に商売してみる?」


リーナが言う。


「いつの間に仲間入りしてるの?」


ミカサは即答した。


「もうしてるやろ?」


「背中預けあった仲やん」


リーナが呆れ顔で


「はいはい」


砂漠の夜風が吹いた。


竜を倒した英雄。


ツンデレの相棒。


そして――


金と交渉の天才商人。


三人の旅が


ここから少しずつ形になっていく。


そしてルークはまだ知らない。


この出会いが


未来の世界を動かすことになることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ