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第73話 王国の思惑

王城の会議室。


重厚な扉の向こうで、静かな緊張が流れていた。


長い机の奥に座るのは王。

その左右には宰相と騎士団長。

そして数人の貴族。


議題は一つ。


竜騎士ルーク。


沈黙を破ったのは貴族の一人だった。


「竜を討った英雄……」


「これほど使える存在はそうおりませんな」


別の貴族が笑う。


「世界に見せつけるべきです」


「この国には、竜を屠る男がいると」


騎士団長が眉をひそめた。


「英雄は道具ではない」


しかし宰相は冷静だった。


机の上に一枚の書簡を置く。


「友好国ラシード王国から正式要請です」


砂漠の国。


王国にとって重要な交易相手。


石油の供給国でもある。


だが最近問題が起きていた。


「採掘場周辺で魔物が増加」


「作業員が襲われ、採掘停止寸前」


宰相が続ける。


「原因究明と討伐を依頼されています」


貴族の一人が笑った。


「都合がいいではないか」


「竜騎士を派遣する」


「友好の証になる」


「そして世界に示せる」


この国には英雄がいる、と。


王は静かに目を閉じた。


そして言う。


「ルークを呼べ」


しばらくして、扉が開く。


ルークとリーナが入ってきた。


まだ王城の空気には慣れていない。


リーナは周囲を見渡す。


「また呼ばれたの?」


ルークは苦笑した。


「たぶんそういう立場になったんだと思う」


王が口を開く。


「竜騎士ルーク」


「頼みたいことがある」


宰相が説明した。


ラシード王国の件。


採掘場の魔物。


原因調査と討伐。


リーナが眉を上げる。


「それってギルド依頼じゃないよね」


「国家依頼だ」


宰相が答えた。


王は続ける。


「断ることもできる」


「お前は自由な冒険者だ」


静かな沈黙。


ルークは少しだけ考えた。


そして答えた。


「困っている人がいるなら行きます」


貴族の一人が小さく笑う。


「実に扱いやすい英雄だ」


騎士団長が睨んだ。


だがルークは気にしていなかった。


王は頷いた。


「では頼む」


「この任務は王国の代表としての派遣だ」


「ラシード王国との友好の証になる」


つまり――


外交任務。


英雄外交。


リーナが小声で言った。


「完全に政治カードね」


ルークは苦笑する。


「そうだね」


「でも現場の人には関係ない」


リーナはため息をついた。


「ほんとバカ」


数日後。


砂漠国家ラシード。


赤い砂。


灼ける太陽。


黒い煙を上げる採掘塔。


港とは違う、乾いた空気が街を包んでいた。


市場は騒がしい。


香辛料の匂い。


布の色。


異国の言葉。


リーナが目を丸くする。


「暑っ……」


「世界ってほんと広いね」


ルークは周囲を見回す。


「でも同じ人が生きてる」


市場を歩いていると、商人が近づいてきた。


「お客さん!この宝石どう?」


「特別価格!」


リーナが顔をしかめる。


明らかにぼったくりだ。


その時――


女性の声がした。


「兄ちゃん、それぼったくりやで」


振り向く。


そこにいたのは一人の女。


砂漠用の軽装。


長い黒髪。


大人びた美人。


そして、かなりグラマラス。


腰には小さな短剣。


商人の男が顔をしかめた。


「なんだお前」


女は肩をすくめた。


「旅人相手に倍値とか、さすがにやりすぎや」


商人は舌打ちして去っていった。


女がこちらを見る。


にやっと笑った。


「初めましてやな」


「うちミカサ言うねん」


「色んな国まわって商売しとる」


リーナが警戒する。


「商人?」


「せや」


「行商や」


ミカサは二人をじっと見た。


そして急に目を見開いた。


「あ」


「もしかして……」


後ろから護衛兵の声。


「竜騎士様」


ミカサ


「……は?」


「え」


「ちょっと待って」


「竜騎士?」


「ドラゴン倒した奴?」


周囲の人間がざわつく。


ルークは困った顔をした。


「ただの冒険者です」


ミカサは頭を抱えた。


「いやいやいや」


「この辺りじゃ、めちゃ有名な冒険者やん」


「時の人と会えるなんて、うちもついてるわ」


リーナが小さく笑う。


「もう隠せないよ」


ミカサは腕を組んだ。


「ほーん……」


「で」


「採掘場行くんやろ?」


ルークが驚く。


「知ってるの?」


ミカサは肩をすくめた。


「この街の商人やで」


「最近魔物増えて困っとるんは有名や」


少し真面目な顔になる。


「正直な」


「空気よぉない」


リーナ


「どういう意味?」


ミカサ


「まぁ現地行ったらわかる」


そして笑った。


「案内したる」


リーナが疑う。


「なんで?」


ミカサ


「商売や」


「英雄と知り合いになったら儲かるやろ?」


ルークは笑った。


「正直だね」


ミカサは指を立てる。


「ただし」


「タダやないで?」


リーナ


「やっぱり商人ね」


ミカサ


「当たり前や」


そしてルークを見て、少しだけ真面目な声で言った。


「兄ちゃん」


「英雄ってのは利用されるもんや」


「気ぃつけや」


ルークは静かに答える。


「それでも助けたい人がいる」


ミカサは少しだけ目を細めた。


「……ほんま損な性格やな」


砂漠の風が吹いた。


英雄の外交任務。


そして――


新たな出会い。


ルークの名は、

ここから少しずつ世界へ広がっていく。

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