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第71話 討伐の証拠

砂煙の向こう。


巨大な翼竜が、崩れ落ちたまま動かない。


静寂。


火山帯に、風の音だけが戻ってきた。


ルークは膝をついた。


息が荒い。


喉が焼ける。肺が痛い。手に力が入らない。


口元から血が落ちる。


「……終わった……」


その瞬間――


「ルーク!!」


リーナが駆けてきた。


足場も気にせず。


転びそうになりながら。


そのまま抱きつく。


「バカ!!」


「ほんとにバカ!!」


胸を叩く。


声が震える。


「死ぬかと思ったじゃない……!」


「ほんとに……!」


涙が溢れて止まらない。


「……相手の強さを、見誤ってた」


ルークは苦笑する。


「でも、生きてるよ」


指を動かす。


「……当たり前でしょ……!」


「でも……」


「でも……!」


言葉にならず、顔を押し付ける。


しばらくそうしていた。


荒い呼吸が落ち着くまで。


ルークはポーションを取り出し、飲み干す。


焼けた肺の痛みが消え、息が通る。


擦り傷と火傷もゆっくりと癒えていく。


やがてリーナが顔を上げた。


「……勝ったんだよね?」


「うん」


「ドラゴン、倒したんだよね?」


「倒したよ」


震えが、安堵へ変わる。


「……よかった……」


泣き笑いだった。


ルークは巨大な死体を見上げる。


「証拠、いるよな」


影が広がる。


空間収納。


翼竜の巨体がそのまま消えた。


リーナが呆然。


「それ……収納できるの?」


「できるみたい」


「もう何でもありね……」


麓の村へ戻る。


依頼人の男が目を見開いた。


「……まさか……」


ルークは頷く。


「終わりました」


男は崩れ落ちた。


「……あぁ……」


「助かった……」


「これで……これで……」


何度も頭を下げ、泣き続けた。


数日後。


村を支配していた領主の街。


その街のギルド。


ドラゴン討伐の報告を告げた瞬間、空気が変わる。


別室へ通され、すぐに役人たちが現れた。


「ドラゴン討伐だと?」


「しかも二人で?」


「嘘なら大問題だぞ、ギルドマスター」


「……いえ、本当のようです」


その一言で事態が動いた。


倉庫へ案内される。


ルークは収納を解除した。


轟音と共に現れる翼竜の死体。


その場が凍りつく。


「……単独討伐?」


「国家級だぞ……」


鑑定官が震える声で断言する。


「本物です」


「ほぼ完全な状態」


「素材価値は――」


紙が床に落ちた。


「……街の年間予算を超えます」


沈黙。


「待て……」


「この額、街では抱えきれん……」


ざわめきが広がる。


「爪」


「鱗」


「翼膜」


「魔核」


「すべて最高級素材です」


「正確な査定は明日までお待ちください」


ギルド長が頭を掻く。


「悪いが今日はここまでだ」


「前例がなさすぎる」


「だが必ず正当に扱う」


ルークはただ呆然としていた。


証拠として持ってきただけだった。


こんな騒ぎになるとは思っていなかった。


「……大変なことになったな」


依頼人の男が震え声で言う。


「あなたは冒険者じゃない……英雄です」


「村だけでなく、街まで救った」


「私のような者を信じて戦ってくれた」


ルークは静かに答えた。


「困っている人がいたら駆けつけただけです」


「それだけですよ」


「英雄気取り!!」


「やめて、恥ずかしい!」


リーナが勝手に照れる。


だが――


周囲の視線は完全に変わっていた。


この日。


ルークは“強い冒険者”から

伝説へ足を踏み入れた存在になった。

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