第70話 翼竜 終幕
ルークは踏み込んだ。
光が身体を包む。
速度が、限界を越える。
視界が流れ、
世界が引き延ばされる。
一歩。
一閃。
二歩。
連撃。
鱗が砕け、血が噴き、肉が裂ける。
止まらない。
止められない。
さらに速く。
さらに深く。
剣が悲鳴を上げる。
次の瞬間――
バキン、と乾いた音。
氷剣が折れた。
だが、止まらない。
ルークの手元に新たな剣が現れる。
在庫。
迷いゼロ。
そのまま叩き込む。
斬る。
裂く。
貫く。
速度がさらに上がる。
身体が軋む。
口から血が滲む。
息が上がる。
視界が揺れる。
意識が遠のきかける。
それでも止まらない。
速くなればなるほど、
剣にかかる重力が増していく。
衝撃が骨に響く。
指の感覚が消えていく。
無心だった。
皮を破り、
肉を裂き、
刃はついに内部へ届いた。
――ここだ。
ルークは闇へ切り替える。
剣に超重力が叩き込まれる。
全身の力を一点へ。
振りかぶる。
その瞬間。
翼竜が最後の力を振り絞る。
喉奥が赤く輝く。
炎が漏れ出す。
「……間に合え」
轟音寸前。
だが――
ルークの一撃が先に届いた。
超重力を纏った斬撃が、
翼竜の首を内部から引き裂く。
衝撃が走り、
巨体が震え、
炎は途中で途切れた。
翼竜は――
その場に立ったまま、
完全に動きを止めた。
次の瞬間。
巨体が崩れ落ちる。
山が揺れ、
砂煙が舞い上がる。
静寂。
ルークは膝をついた。
血を吐く。
呼吸が荒い。
だが――
生きている。
翼竜はもう、動かない。
一体で村を滅ぼした化け物は、
こうして終わった。




