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第69話 翼竜・その弍


地面に叩きつけられた翼竜が咆哮する。


岩盤が波打つ。


衝撃で火山灰が空へ舞い上がった。


その瞬間――


影が伸びた。


黒い手が何本も翼竜の脚へ絡みつく。


「止める!」


一瞬、巨体が引きずられる。


完全には止まらない。


だが、わずかに動きが鈍った。


その隙。


ルークの掌に闇が凝縮される。


空間が歪み、光が吸い込まれていく。


「――ブラックホール」


闇が翼竜の胸へ叩き込まれた。


心臓の位置。


空間ごと削り取る必殺。


これで終わる――


はずだった。


だが。


闇は確かに喰らいついた。


肉も、鱗も、抉った。


しかし。


翼竜は――倒れない。


えぐれた部位が、灼熱と魔力で焼き塞がれていく。


咆哮が火山を震わせる。


「……効かない?」


背筋が冷たくなる。


レベル差か。


耐性か。


それとも――


「この格の化け物には通らない……!」


判断は一瞬だった。


翼竜の尾が唸りを上げて振り抜かれる。


「リーナ、下がれ!!」


影で一気に遠方へ投げ出す。


次の瞬間――


尾が通った岩山が消し飛んだ。


巻き込まれていたら跡形もない。


これ以上、戦線にいさせられない。


ここからは――


一人でやる。


(無駄な技は捨てる)


(削って殺すしかない)


ルークは氷剣を構えた。


魔力が刃に奔流のように流れ込む。


翼竜が踏み込む。


地面が割れ、衝撃が走る。


ルークは正面から突っ込んだ。


爪の間をすり抜ける。


腹下へ潜り込む。


一閃。


氷が爆ぜる。


鱗が砕ける。


血が噴き上がる。


翼竜が悲鳴を上げる。


即座に跳躍。


影で位置をずらす。


炎が直撃した地面が溶岩になる。


もう一撃。


脚を切る。


腹を裂く。


首元へ斬撃。


一撃一撃は致命にならない。


だが確実に削る。


避ける。


斬る。


離れる。


また斬る。


翼竜は暴れ狂う。


炎を乱射し、尾を叩きつけ、翼で嵐を起こす。


だが――


その動きが、少しずつ鈍る。


呼吸が荒くなる。


血が岩肌を黒く染めていく。


「……効いてる」


ルークの目が細くなる。


「一撃じゃ倒れないなら」


「殺し切るまで刻むだけだ」


翼竜の咆哮に、初めて混じる異音。


苦痛。


恐怖。


化け物が――死を理解し始めていた。


決着は、消耗戦へ突入した。


そしてこの戦いは、


翼竜が初めて“敗北を意識する戦場”へ踏み込んでいく。

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