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第65話 焼けた村からの来訪者

昼下がりのギルド。


依頼の紙を整理する音と、冒険者たちの雑談が混ざる、いつもの空気だった。


その扉が――


きしりと音を立てて開いた。


入ってきた男は、土と灰にまみれていた。


服は焦げ、ところどころ破れている。


靴も片方は焼け溶けていた。


ざわ、と視線が集まる。


男はふらつきながらカウンターにたどり着く。


リーナが立ち上がった。


「……どうされました?」


男の喉が鳴る。


唇が震える。


「ルークという冒険者は……」


「ここに、いますか……?」


一瞬、ギルド内が静まった。


ルークが顔を上げる。


「俺です」


男は振り返った。


その目には、涙と焦点の合わない絶望が宿っていた。


「お願いです……」


その場で膝をつく。


石床に額を打ちつける。


「助けてください……」


「もう……村が……」


言葉が崩れる。


「空から炎が降ってきて……」


「家が燃えて……」


「人が……人が……」


喉が詰まる。


声にならない嗚咽。


ギルドの誰もが黙っていた。


男は震える指で空を指す。


「翼のある……化け物です……」


「火を吐く竜でした……」


「村は……半分じゃありません……」


「ほとんど、死にました……」


その一言が、重く落ちる。


「逃げられたのは……ほんの数人だけで……」


「子供も……老人も……」


「みんな……」


床に拳を打ちつける。


「騎士団に行きました……」


「助けてくれと……」


「でも……」


男は笑うように泣いた。


「刺激したら町まで来るから様子を見ると……」


「様子を見る間に……」


「うちの村は消えたんです……」


沈黙。


重たい沈黙。


ルークが静かに口を開く。


「どこですか」


男が顔を上げる。


「国の辺境です……」


「火山の近く……」


「行くのに十日はかかります……」


「でも……もう誰も行ってくれない……」


拳を握る。


「ドラゴン討伐なんて無理だって……」


「国家級だって……」


「だから見捨てられました……」


ルークは立ち上がった。


椅子が静かに鳴る。


「案内してください」


ギルドがざわつく。


「おい、正気か!?」


「ドラゴンだぞ!」


「国が動く案件だ!」


ルークは振り返らなかった。


ただ男を見る。


「行きますよ」


「誰も行かないなら」


「俺が行きます」


男の目に光が戻る。


「……本当に?」


手元からジャラジャラ音がした。


必死で掻き集めたのであろう、少しの金と大量の銅銭


しかし周りの冒険者は金額見合っていないとわかる。


ただし今動こうとしている者はこの街一番の世話焼きで最強


その男が行くっていうなら誰も止めない。


「うん」


短く、確かに。


リーナも一歩前へ出る。


「もちろん私も行くわ」


ギルド長ヤンが低く笑った。


「はぁ……」


「またとんでもねぇの拾ってきやがったな」


「だが」


目が鋭くなる。


「見捨てる理由はねぇ」


焼けた村から始まる戦いが、今、動き出した。

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