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第62話 帰る場所と、ここがみんなの家

街門が見えた。


トリビエン。


見慣れた城壁と、人の往来。


「……帰ってきたね」


リーナが小さく言う。


「うん」


馬車を降りると、空気が違った。


落ち着く匂い。

人の声。


いつの間にかここが“拠点”になっていた。


ギルド前では、子供たちが走り回っている。


「あっ!!」


「ルークだ!」


「リーナだ!」


一斉に駆け寄ってくる。


足にしがみつき、抱きつき、離れない。


「帰ってきたぁ!」


「どこいってたの?!」


「無事だった?」


ルークが笑う。


「ただいま」


その一言で胸が温かくなる。


そこへヤンが腕を組んで現れた。


「少しばかり噂になってるぞ」


「ブリッセル、綺麗にしたそうじゃねぇか」


「さすがギルド長。情報が早いね」


「当たり前だ」


「情報はギルドの命綱だからな」


「まあ……なんとかなったよ」


ヤンは街の方を顎で示す。


「街も持ち直してる」


「それと――」


「孤児院も、もうすぐだ」


リーナの目が輝いた。


「ほんと!?」


「骨組みはとっくに終わってる」


「仕上げの段階だ」


二人は顔を見合わせる。


胸が高鳴った。


それからしばらくして。


平民地区。


かつての空き地に、もう荒れた景色はなかった。


白い壁。

大きな窓。

中庭。

光を取り込む屋根。


そこには――家があった。


子供の声が響いている。


「……完成だ」


リーナの目が潤む。


「すごい……」


パウロが誇らしそうに立っていた。


「子供の目線で作りました」


「隠れる場所も」


「走れる場所も」


「安心できる場所も」


扉が開く。


子供たちが一斉に駆け込む。


「広い!」


「明るい!」


「ここで寝るの!?」


「私のベッドある!」


笑顔が弾けた。


ヤンが軽く咳払いする。


「今日からここが正式な孤児院だ」


簡単な式だった。


派手じゃない。


だが、温かい。


ルークが一歩前へ出る。


「ここは」


「守られるだけの場所じゃありません」


「育つ場所です」


「夢を諦めない場所です」


子供たちの目が真剣になる。


「困ったら頼ってください」


「でも――」


「自分の足で立てるようになります」


リーナが続いた。


「みんなの未来は」


「ここから始まるの」


拍手が広がる。


街の人たちも混じっていた。


もう孤児院は“特別な場所”じゃない。


街の一部だった。


パウロの目に涙が滲む。


「レイナ……」


「見てるか」


ルークは空を見上げた。


青空。


風が吹き抜ける。


ここから何かが始まる。


確かに――始まった。

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