表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/115

第61話 終わった街と、ぬくもり


港はいつも通り動いていた。


船が出て、荷が運ばれ、人々が働く。


活気は変わらない。


だが――

裏で流れていた闇だけが消えていた。


ヤーフ管轄の倉庫は封鎖。


帳簿はギルドへ渡され、違法取引は一斉摘発。


人身売買の連中は捕まり、逃げ場はなかった。


街は静かに浄化された。


表の物流は止まらない。


だが裏だけが切り取られた。


「理想的な終わり方ね」


リーナが小さく言う。


「被害は最小で済んだね。人の生活にも影響は出なさそう」


「今回は悪いところだけ消えた」


「うん」


ルークは港を見つめた。


「これが一番よかった」


メールカリ商会は存続。


だが闇は完全に切り離された。


責任者は表に引きずり出され、裁かれた。


メールカリはすべてを告白し、財を差し出し、監視下に置かれた。


逃げ場はない。


生きて償う人生が始まった。


「これでブリッセルは大丈夫」


「うん」


潮風が頬をなでる。


「帰ろうか」


「……帰ろう」


二人は並んで歩き出した。


背後で港は動き続ける。


闇だけを置き去りにして。


――――――


夜。


宿の部屋。


灯りは小さく、静かだった。


リーナはベッドに座ったまま動かなかった。


膝を抱えている。


ルークは少し離れた椅子に座る。


無理に話しかけない。


ただ、そばにいる。


長い沈黙。


やがて――


「……怖かった」


小さな声。


ルークは答えない。


ただ聞く。


「触られて」


「殺されそうになって」


「何もできなくて」


肩が震える。


「強いって思ってたのに」


「全然だった」


ルークは立ち上がり、静かに隣へ。


腰を下ろす。


「強いよ」


「でも」


「怖い時に怖いって言えるのは」


「もっと強い」


涙がこぼれる。


「……バカ」


「慰め方下手」


「ごめん」


それでも離れない。


リーナは少しずつ距離を詰める。


肩に寄りかかる。


「離れないで」


「離れないよ」


即答だった。


しばらくそうしていると、呼吸が落ち着いていく。


「ルーク」


「なに?」


「助けに来てくれてありがとうね」


「当たり前だよ」


「……英雄みたいだった」


「やめて」


「ちょっとかっこよかった」


「やめてって」


くすっと笑う。


久しぶりの笑顔。


「ねぇ」


「また一緒に旅しようね」


「うん、その気だった」


「次は怖くないところもいっぱい行こ」


「約束」


静かな夜。


傷は消えない。


でも――


心は、確かに前へ進み始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ