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第58話 親の気持ち



メールカリ邸。


ルークの姿は影の中に溶けていた。


壁を伝い、屋根を越え、窓の縁を滑るように進む。


屋敷の構造はすでに頭に入っている。


下調べは済ませていた。


執事が通る。


メイドが角を曲がる。


邪魔になる位置に来た瞬間――


影が伸びる。


首を締め、静かに床へ落とす。


音は立てない。


時間がない。


最上階。


一番奥の部屋。


扉の前には屈強な男が二人。


躊躇は一瞬もなかった。


影が足元から絡みつく。


喉を締め上げる。


骨が鳴り、二人は同時に崩れ落ちた。


気絶。


ルークは扉を開ける。


中には――


メールカリがいた。


目を見開く老人。


「な……!」


ベッドを見渡す。


床を見る。


リーナはいない。


「貴様のしてきたことはわかっている」


低い声。


「トリビエンの屋敷の地下」


「積み上がった骨」


メールカリの顔が強張る。


「……そこまで知っているのか」


「最近嗅ぎ回っていたのは貴様らか」


「そんなことはどうでもいい」


ルークの殺気が部屋を満たす。


「そして今連れてきた女の子はどこだ」


「それは知らん」


嘘ではない目だった。


ルークは外で倒れている護衛の方へ視線を向ける。


「次はお前だ」


メールカリが乾いた笑いを漏らす。


「それもいいかもしれんな」


「愚息の尻拭いには疲れた」


「……愚息?」


「なんだ、そこまでは辿り着いていなかったのか」


沈黙。

「貴様の知っていることを話せ!!」


「愚息の名はヤーフ」


「この屋敷の裏手の土地だ」


「そこで好き放題やっている」


「あのような化け物にしてしまったのは……私のせいだ」


メールカリは椅子に沈み込んだ。


「止めれるなら止めてくれ」


「行けばわかる」


ルークは振り返らなかった。


影に溶け、そのまま夜へ飛び出す。


裏手の屋敷。


荒れた庭。


酒瓶。


騒ぐごろつき。


時間がない。


ルークは影を纏い、一直線に駆けた。


喉を裂く。


鳩尾を砕く。


首を落とす。


無抵抗の者は気絶。


抵抗する者は死。


音を立てず、次々と倒れていく。


迷いはなかった。


屋敷の奥。


空の部屋。

空の部屋?絨毯には何かを引きずった跡

「……違う?」


だが、風が流れている。


壁の隙間。

「隠し扉か。細工を探す時間はない」

闇で打ち抜く。


崩れた石の向こうに階段。


血の匂い。


嫌な予感が確信に変わる。


降りる。


そこに――


拘束台。


上半身裸のリーナ。


床には切り落とされた青く緑の髪。


腹に突き立てられたナイフ。


血。


そして狂った目の男。


「わ、わわわ……!」


振り返った瞬間――


ルークの拳が顔面を砕いた。


男は壁を突き破って吹き飛ぶ。


「リーナ!」


即座に光魔法。


傷口が塞がる。


血が止まる。

息はある・・・

「起きてくれ……」


数秒。


長い沈黙。


やがて――


「……ルーク……?」


声。


意識が戻る。


涙が溢れる。


「私……あの人に……」


震える体。


ルークは迷わず抱きしめた。


顔を胸に押し当てる。


「もう終わった」


「大丈夫だ」


「誰にも触れさせない」


リーナの指が服を掴む。


嗚咽。


ルークはただ抱き締め続けた。


闇は、ここで断ち切られた。

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