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第57話 消えた背中



翌日。


二人は別行動を取った。


リーナは保護した被害者たちの身元確認へ。


家族がいる者は実家へ。

身寄りのない子は孤児院へ。


ルークは港へ戻った。


狙いは――帳簿。


倉庫の管理室。


積荷記録。

取引先。

受付番号。


一つ一つを追っていく。


「……なるほど」


商会そのものがすべて黒ではない。


正規取引も確かに存在する。


だが――


ある区画だけが異常だった。


同じ商会。

同じ仕組み。


だが管理番号だけが違う。


流れの終点に記されていた名前。


――ヤーフ。


「管轄が分かれている」


「表は白」


「裏だけ黒」


人身売買。

麻薬。

盗品。


すべてこの“ヤーフ管理”に集中していた。


「つまり――」


「ここを切れば闇は止まる」


商会全体を壊せば街の物流が死ぬ。


だがこの区画だけなら被害は最小。


ルークは静かに息を吐いた。


「賢い」


「だからこそ質が悪い」


気づけば夕方。


約束の時間。


宿へ戻る。


だが――


リーナがいない。


「……まだか?」


少し待つ。


十分。


二十分。


一時間。


遅すぎる。


胸の奥がざわつく。


外へ出る。


足取りを追う。


人に聞き回る。


そして――


市場の端で耳に入った声。


「さっき女の子、攫われてなかったか?」


ルークの足が止まる。


「……詳しく」


男が顎で示す。


「綺麗な子だったよ」


「シーエルフだったな」


胸が締め付けられる。


「連れてたのは?」


「男だ」


「普通の格好だったけど」


「女の子の口元に布を当ててた」


――薬だ。


痺れ薬か、眠り薬。


リーナが簡単に倒れるはずがない。


だからこそ。


「馬車に乗せてた」


「二人くらいだったと思う」


「どっちへ?」


指された方向は――


街の外ではない。


富裕層地区。


ルークの呼吸が一瞬止まる。


「……最悪だ」


誰の仕業かはわからない。


だが、まともな連中じゃないのは確実。


ふと、メールカリの屋敷が脳裏をよぎる。


あそこなら――

隠せる。

守れる。

誰も疑わない。


理由はまだわからない。


目的もわからない。


ただ――


リーナが連れ去られ


時間だけが奪われていく。


ルークはその場を飛び出した。


考えるより先に体が動いていた。


夕焼けが街を染める。


その下で、


一人の少女が闇へ運ばれている。


そしてルークは、


影を使い、全速力で追い始めた。

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