第51話 集まる
数日後。
平民地区の空き地には、すでに人影があった。
パウロが巻物を広げ、
地面に木炭で線を引いている。
「ここが玄関」 「ここに中庭」 「子供たちが走り回れるよう、壁は低めに」
ルークとリーナが覗き込む。
「思ったより広い」
「明るそう」
パウロは少し照れたように笑った。
「光が入るように設計しました」
「暗い場所は、人の心も暗くしますから」 その時―― 「おーい!」
聞き覚えのある声。
振り返ると、
かつて助けた商人の姿。
さらにその後ろから、
「手伝いに来たぞ!」
「噂聞いた!」
「面白そうじゃねぇか!」
次々と人が集まってくる。
魔獣被害から救われた農夫。
護衛で助けた商隊。
路地で守った子供の親。
リーナが目を丸くする。
「……なにこれ」
「知らないうちに人気者?」
ルークは苦笑した。
「そ、そうなのかな」
そこへヤンも現れ、腕を組む。
「ギルドからも人を出した」
「資材の運搬、基礎工事、管理は任せろ」
「もう街の仕事だ」
ハンマーの音が鳴る。 木材が運ばれる。 石が積まれる。
空き地は一気に“現場”へと変わっていった。
子供たちは少し離れた場所から見ていた。
「なに作ってるの?」
「ここ、ぼくたちの?」
リーナがしゃがみ込む。
「そうよ」
「みんなの家」
目が輝く。
「ほんとに?」
「走っていい?」
「もちろん」
一斉に駆け回る。
まだ何もない土地を、未来の庭のように。
ルークの胸が少し熱くなった。
作業は想像以上の速さで進んだ。
誰も金を求めない。
「恩返しだ」
「助けてもらったからな」
「未来に使え」
その言葉ばかりだった。
夕方。 パウロが汗だくで笑う。
「数名でやるつもりでしたが……」
「結局、何十人集まったことやら」
ヤンが鼻を鳴らす。
「街ってのはな」 「守られると、守り返すもんだ」
リーナがルークを見る。
「これ、あんたが作ったんだよ」
「剣じゃなくて」
「人で」 ルークは少し照れた。
「俺じゃないよ」
「リーナの強い思いとみんながいたから作れたんだよ」
日が沈むころ。
基礎が完成していた。
ただの空き地だった場所に、未来の輪郭が現れている。
子供たちはその上に座って笑っていた。
「ここがぼくの部屋かな!」
「ここは遊ぶとこ!」
夢が次々と生まれていく。
パウロが静かに言う。
「間違いなく、いい場所になりますよ」
ルークは頷いた。
「そうなるようにします」
「絶対に」
夕焼けが現場を染める。




