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第48話 市長へ報告

市庁舎の応接室。


一通り話を聞き終えた市長は、腕を組んで唸った。


「確か……あそこの元オーナーは一代で財を成してな」


「10年ほど前、この街を出て隣の街――ブリッセルへ引っ越したと聞いている」


「今どうしているかは知らんが」


ルークの目がわずかに細まる。


「事件の前後で姿を消したわけですね」


「……ああ」


市長はため息を吐いた。


「それにしても困った」


「あの家でそんな恐ろしいことが起きていたとなると」


「浄化したとはいえ、気味悪がって誰も住まんぞ」


「噂はすぐ広がるからな」


しばらく考え込み、急に顔を上げた。


「――そうだ!」


「一旦お前たちが住んでくれ!」


「形だけでも人の出入りがあれば安心感が出る」


「落ち着いたところで売りに出そう!」


リーナが目を丸くする。


「え、私たちが?」


「心霊物件対策だ!」


「実績ある冒険者が住んでるなら説得力抜群だ!」


「宣伝にもなる!」


話は止まらない。


「家賃はいらん!」


「維持費も街持ち!」


「半年ほどでいい!」


「むしろ礼金を――」


さらにルークを指さす。


「それにしても浄化ってなんだ!」


「お前さん聖職者だったのか!?」


「光属性なんてとんでもなく貴重だぞ!」


「こうしてはおれん、報告書を――」


「ちょっ、ちょっと待ってください」


ルークが手を上げた。


市長が止まる。


「まず整理しましょう」


「一つ」


「あの家に僕たちが住む、ですか?」


「リーナが嫌がるかもしれませんし」


「それに僕たちの意見は?」


市長はきょとんとする。


「お前さん、今どこで寝泊まりしてる?」


「どうせ安宿だろ?」


 ルークが心の中で(失礼なっ)


「ならタダで寝所が手に入るんだぞ?」


「費用も全部街持ちだ!」


「優秀な冒険者が住めば、その後の宣伝にもなる!」


「ははは!」


ルークはそっとリーナを見る。


「……どう?」


リーナはそっぽを向く。


「べ、別に」


「そんなの気にしないわよ」


だが心の中では大混乱だった。


(未婚の男女が一つ屋根の下……)


(寝言とか聞かれたらどうしよう……!)


(きゃあああ……!)


顔が熱い。


ルークは苦笑する。


「じゃあ家の件は前向きに考えます」


「ただ――」


「光属性のことはあまり大げさにしないでください」


「生活に支障が出るのは困ります」


市長はしばらく考え込み、


「……そうだな」


「少し先走りすぎた」


「市民の声を聞かずして何が市長か」


自分の額を軽く叩いた。


「すまん、謝る」


そして顔を上げる。


「そうだ」


「前に言っていたな」


「この案件が終わったら孤児院の件をどうにかしてほしいと」


ルークとリーナが息を呑む。


「富裕層地区では無理だが」


「それ以外なら許可を出そう」


「正式に進めていい」


「……本当ですか?」


「ああ」


二人の顔が一気に明るくなる。


「やっと前に進めるな」


「ありがとうございます!」


地下室の検証や報告整理に数日かかるという話になり、二人は庁舎を後にした。


昼時。


二人は近くのカフェへ入る。


リーナは明らかに機嫌がいい。


「……なんか嬉しそうだね」


ルークが言う。


「べ、別に!」


「アンタと一緒に暮らすから浮かれてるとか思わないでよね!」


「このスケベ!」


「いや、孤児院の話で喜んでるのかなって」


「当たり前でしょ!」


「それで喜んでるんだから!」


一拍。


少し照れながら視線を逸らす。


やがて話題が変わる。


「……レイラちゃんのことだけど」


「犯人が出ていったのが10年前なら」


「亡くなったのはそれより前よね」


「お父さん……まだこの街にいるかしら」


ルークは静かに頷く。


「行ってみるしかないね」


「直接、伝えられればいい」


二人は顔を見合わせた。


次に向かう場所は――

レイラの父のもとだった。

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